コラム

MBAは地方中小企業で活躍できる

そもそもMBAとは

MBAとはMaster of Business Administrationの略で、経営学修士のことです。経営学の大学院修士課程を修了すると取得できる学位です。欧米では、大手企業CEOの約4割がMBA取得者ということもあり、日本でも2000年頃からキャリアアップのために取得する人が増えました。

現在は社会人としての学び直しや、昇進・事業承継によって必要に駆られた、という理由で取得する人が増えてきています。

学ぶことは、経営戦略、マーケティング、人的資源管理、財務会計、ロジカルシンキング、オペレーションマネジメント等、経営を全般的に学んでいきます。最近では時代に応じて、テクノロジーや地方創生、ファミリービジネス、志などを学べる大学院が出てきています。

MBAを取得することのメリット

MBAという学位自体よりも、取得する過程や学びの内容にその価値、メリットがあります。ここでは大きく3つのメリットをご紹介します。

一つ目は、ビジネスの原理原則を体系的に幅広く学べることです。現場経験の延長では大局観を持ち、業務ルールや慣習を飛び越えた意思決定は行いにくいでしょう。社内研修においても、やはり実際にかけられる時間や実務との関係性の面から、大学院程の幅広さはないのが一般的です。

二つ目のメリットは、学びの習慣が身につくことです。ビジネススクールではとにかく物凄い量のケースと参考文献を読み、フィールドワークを行います。仮に夜間のビジネススクールだとしても、業務後や隙間時間を活用して1日3~5時間程勉強します。もちろんスマホで動画を見る時間等はなく、徹底的に勉強に時間を使いますので、卒業後もこの学びの習慣が身に付きます。学び直しが増々重要になる時代において、このメリットは大きいと感じます。

三つめは、質の高い人的ネットワークの構築ができることです。意識、志、能力の高い人が集まり、同じ文脈の中で切磋琢磨します。そのため、とにかく関係が深まります。ここで培われた人間関係は、卒業後の実践の場でも非常に大切になってきます。様々な情報を日々交換しますので、アンテナが張られ、日々の課題解決に繋がっていきます。

このように、MBAはその学位自体ではなく、取得する過程で得られるものに高い価値があるのです。

MBAには否定的な意見が多い

一方で、MBAに否定的な意見が多いのも事実です。様々ありますが、「理論が現場で活かせていない」という意見が多いようです。この意見に関しては二つの可能性があります。

一つ目は「会社や上司がMBAホルダーの能力を活かせていない」という可能性です。MBAを取得すると、ビジネスの原理原則が分かり、かつ大局的に見られるようになります。業界における慣習や経験に捕らわれない経営視点の発想へと思考がシフトしていきます。このような人材にどのような権限を与え、成果を出してもらうかを考える必要があります。経験至上主義の文化やオペレーションの中で従来通りの指示を出してしまうと、大局的に見ているMBAホルダーは納得しません。結果として理論によって反論されてしまうのです。

もう一つは「MBAホルダーが理論の面に偏っている」という可能性です。会社は理論だけでも感情だけでも上手くいきません。情理一体のバランスが非常に重要であることは皆さんご存知の通りかと思います。その中でMBAではとにかく毎日がケーススタディに紐づいた論理の学びの連続です。この新たな学びは脳を強烈に刺激し、受講生に理論に対する万能感を与えます。この体験により、卒業してすぐのMBAホルダーの中には理論武装して会社に戻り動き回ってしまう人がいます。結果として「犬死」することがあります。

会社や上司といった受け入れ側の体制と、MBAホルダーの感情面での現場理解が揃えば、非常に優秀な人材として会社で活躍してくれるでしょう。

地方におけるMBA

そんなMBAホルダーですが、やはり都心に比べ地方では圧倒的に数が少ないのが現状です。主な理由は下記のようなものです。

  • 近くに経営学を学べる大学院がない
  • MBAホルダーの求める高い給与を実現できる規模の会社が少ない
  • 可処分所得が低く、学費が重い
  • 知識を活かせる仕事が少ない

ビジネススクールは一般的に、フルタイムとパートタイムがあります。慶応ビジネススクールに代表されるフルタイムMBAは、会社を辞めて学生としてMBAを取得していきます。一方でグロービス経営大学院のようなパートタイムMBAは夜間や休日に通学してMBAを取得していきます。確かにオンラインで単位が取れる学校も出てきましたが、それでも家や職場の近くに大学院が無いと、そもそも取得するという選択肢が生まれにくいでしょう。

国内ビジネススクールが調査したところ、MBA取得後には年収が平均10%以上アップするという結果が出ています。また卒業3年後の平均年収は1000万円を超えるとのデータもあります。元々の年収の高さもあるのでしょうが、それでも日本の平均年収と比較して高給になる傾向にあるようです。このようなバブリーな給与を地方の中小企業で実現するのは非常に難しいのが現状です。また、MBAの学位取得費用は数百万円となかなか気軽に取得できる金額ではありませんので、可処分所得が高い都心に受講者が集中します。

また地方は一次産業や製造業が多く、経営の体系的な知識よりもいかに経験と技術で日々改善するかが重視される傾向にあることもMBAホルダーが少ない理由です。

MBAは地方中小企業で活躍できるのか

その中で実は今、地方中小企業で活躍するMBAホルダーが出てきています。

一つ目の理由として、社会的貢献を肌で感じやすいことが挙げられます。給与の高さよりも、誰の役に立っているかを重視する人が増えてきています。もちろんこれはMBAホルダーでも例外ではなく、NPOやソーシャルベンチャーに注目するMBAホルダーも増えています。

中小企業はその規模の小ささから、地域の企業、行政、市民と深いつながりを持っています。そして経営者が地域活動に積極的な会社も多く存在します。そのような会社では社会的貢献の成果を目の前で感じることができるため、MBAホルダーも高いモチベーションを持って自身のリソースを活用、活躍しています。

二つ目は、任せられる業務の領域が広いことが理由です。大手企業のように業務が細分化されていることは少なく、多くが兼務やバリューチェーンの上流から下流までを担当することもあります。業務の領域が広いということは、それだけ全体最適を実現させやすいということです。全体を俯瞰し、経営視点で物事を考える訓練をしてきた彼らにとって、非常にやりがいのある状態なのです。

三つめが、新しい事業の立ち上げが軽いということです。経営者の方針にもよりますが、総じて大企業と比較して新規事業へのチャレンジが簡単にできます。ベンチャーの方が新規事業にチャレンジできるかもしれませんが、中小企業とは活用できるリソースの量に差があります。中小企業のリソースと身軽さは、MBAでの学びをすぐに活かせる環境と言えます。もちろん、「犬死」には気を付けましょう。

最後に、これが最大の理由かもしれませんが、ライバルがいないことです。地方には社内外問わずMBAホルダーがあまりいません。人・物・金を総合的に見て判断しているのは経営者だけ、という中小企業も多くあります。まさに小さな池の大きな魚としてプレゼンスを発揮することができるのです。

このように、MBAは地方中小企業でも十分活躍できると言えます。所得よりも自己実現や社会貢献を重視する人材が増えれば、ますます地方で活躍するMBAホルダーが増えていくでしょう。

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  • 地方で「MBA」と言っても、「なにそれ?」と聞かれるかもしれません。
    そのぐらい地方は独特の概念で動いています。

    しかし逆に地方でMBAの知識を活用できるなら、他をぶっちぎって発展することも可能かもしれません。
    コロナ不況でいろんな地域がピンチです。地方での活躍を期待しています。

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