コラム

コロナ後に発展する業種は?変化する社会について考える

以前「コロナが流行っている今発展する業種」については触れましたが、その後いろんな国の状況を視ている内、これは想像よりも大きな変化が世界に起きるのだろうな、と考え始めました。

世界は、伝染病に対する備えがびっくりするほどできていなかった

医療関係者ではないので細かくは書きませんが、正直私は、コロナウイルスが話題になり始めた頃、そこまで大きな問題とは思っていませんでした。
今でも新型コロナウイルス(COVID-19)その物に関しては、SARSやMARS程恐ろしい物だとは考えていません。これは致死率等をみても明らかです。

参照: 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和2年3月22日版)

しかしながらその「恐ろしいものではない」というのは日本の特殊な状況下での判断でした。

  • 皆保険があり、病院に安価で診てもらえるという認識がある
  • 人口100万人あたりのCTスキャン数がダントツ1位、小さな診療所でも肺炎の診断ができる。
  • ごく親しい人以外のスキンシップをしない

これらは日本だと「当たり前」かもしれませんが、残念ながら世界の殆どの国では「当たり前」ではありません。例えば100万人あたりのCTスキャン数は、日本なら1万人に1台ありますが、イタリアでは3万人に1台、イギリスでは10万人に1台しかありません。

参照: https://en.wikipedia.org/wiki/CT_scan

医療費が超高額な国や、簡単な検査に半年以上掛かる国もあります。

日本でそのような状況になれば「医療崩壊」と言われるでしょう。しかし海外の多くの国でそれが当たり前なのです。感染者の拡大や肺炎の重症化は避けられません。

もちろんこれは「日本素晴らしい!」という話ではなく、最終的な状況を見た後で反省会をする必要がある問題なのでしょう。
しかしながら確実に言える事は、今回のコロナウイルスや、それに伴うコロナ不況により、社会は変化を迫られます。
これまでうまく行っていたかに見えた公衆衛生や医療制度が、危機に立たされた際いかに脆弱か、露呈してしまったのです。

そこでコロナウイルスを経験した社会において、どの業種や製品が特に発達する可能性が高いのか、いくつか挙げてみます。もちろん今回の騒動がどのような形で終息するのかはまだわかっていません。しかし為政者や経営者がリスクマネジメントを図るであろうことはほぼ間違いないでしょう。

コロナ後の社会で発展する製品・業種

衛生管理

エレベーターのボタンも、衛生問題が取り沙汰されている

例えば日立製作所の中国法人「日立電梯」はエレベーターの製造メーカーですが、かねてから「抗菌ボタン」や「紫外線消毒機能」「ノータッチボタン」等を実装してきました。これはコロナウイルスの騒動から実装したものではなく、衛生を考えて実装されていたものです。
新型コロナ騒動の中でこれらの取り組みは評価され、現在「 日立電梯 」のエレベーターは大変注目されているとのことです。
参照:https://www.j-cast.com/2020/03/13382074.html

同じように、今後は衛生を謳った製品が数多く出てくるものと思われます。
もちろん効果の疑わしいものや、大して影響を及ぼさないものも多く現れるとおもいますが、消費者が選ぶ際、大きな要素の一つになることは確かです。

ウェアラブルデバイス

ウェアラブルデバイスは集団感染の解決策になるのか

例えばエコモット株式会社が先日開発したシステムでは、ウェアラブル装着可能な赤外線カメラで、離れた位置にいる人物の体温を計測。もし発熱の疑いがある場合はリストバンド型のデバイスにその旨をバイブレーション等で告知することができます。イベント会場や宿泊施設の入り口で、利用者に配慮した形で別室誘導や然るべき処置等を行うことができるのです。
なお同社がプレスリリースを出した日、株価は逆行高となりました。
参照:https://www.ecomott.co.jp/press/3280/

なお、それ以外にもウェアラブルデバイスは期待されています。
例えば今回のような伝染病の感染経路をたどる際、多くの人が深部体温センサ付きのウェアラブルデバイスを装着していたら?
そしてその情報を一元管理できたら?

どこに感染者がいるのか、どこで感染した可能性が高いか、どこにクラスター(感染者の集団)が発生しつつあるのか、非常に明確になるでしょう。
もちろんこれは仮定の話です。プライバシーの問題から日本で実現されることはほぼ無いとみていいです。

しかし中国や米国ならあり得るかもしれませんし、他の民主主義国家についても、医療崩壊が起きつつある中では、個人のプライバシーより情報収集のほうが優先されるかもしれません。

実際、米国政府はコロナ対策にスマートフォンの位置情報を活用できるか、すでに検討しています。

AR・VR

AR技術は人の行き来が途絶した今、求められている

今回日本でも多くの企業がテレワークに踏み切りましたが、アメリカやEUでは外出禁止令が出ているため、ほぼすべての企業が自宅での勤務を強いられています。

そういった中にあってやはりネックになるのは、情報共有の問題です。
製品の仕様や空間のレイアウト等は、画面上で把握するのが大変難しいため、テレワークが行いにくい案件です。
また相手の表情を伺ったり、資料を指差したりができない、というのはコミュニケーションを円滑に運ぶに当たり支障をきたします。

そういった物を解決するのが、ARやVRの技術です。
これはコロナウイルスが騒ぎになる以前から、遠隔地でのやり取りをスムーズにするため開発が進められていた技術ですが、今回の騒ぎでAR・VR技術の進歩は急務となりました。

ただし短期的な面では、AR・VRデバイスの出荷量が落ちています。多くのデバイスは中国で生産されており、工場が閉鎖されているからです。

無人流通

コロナ不況以前より開発が進められていたテスラの物流トラック

中国では、今無人で配送できるシステムが求められています。

今回のコロナ騒動はタイミングも最悪でした。春節の休暇時にコロナウイルスが爆発的に増えてしまい(だからこそ流行ったというのもありますが)多くの従業員が地方から都市圏に戻ることができなくなりました。

その結果起きたのは流通の停止です。上海港ではぞくぞくと届く荷物を配達するドライバーがおらず、冷凍肉が山積みとなったままです。受け入れができない場合は他の港に回さることになり、更にそれを受け取るドライバーが長期輸送を強いられるという、非常に混乱した状態が起きています。
参照:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200302/mcb2003020831011-n1.htm

また、自宅待機命令を出しても、日々の食事や生活必需品は手に入れる必要があります。しかし、それを宅配する人がいない場合、最悪餓死してしまいます。
病院の場合更に深刻です。数多くの入院患者に、必要な物資や医薬品を運ぶにあたっては遅れが許されません。

そんな中で求められているのは無人運転ができる運送車ですが、残念ながらまだ完全無人化はできておらず、救世主にはなっていないようです。

しかし人間のドライバーがリスクになると判明した以上、無人運転も導入に向けて加速することになるでしょう。多少の犠牲には目をつむることになるかもしれません。

工場ロボット

工場の無人化は加速する?

同じことは工場でも言うことができます。
同じく中国にて、春節から従業員が戻ってこないため、多くの工場が閉鎖しています。中国全土の自動車工場稼働率は3割程度まで落ちました。

もちろん今でも、ロボットはあらゆる工場で利用されています。しかしまだ人間の手作業で一部の工程は行われています。そのほうが確実で低コストな場合もあるのです。

しかしドライバーと同じく、今回の騒ぎで「人間の従業員こそリスクになる」という見方が広がる可能性は大いにあります。

特にローカル5Gによって、工場の自動化は大きく進むとすでに予測されています。今回の騒動によりおそらく前倒しで実現することになるでしょう。

悲劇、しかし社会は強くなる?

今回のことを好機とは言いたく有りません。正の面ばかりを取り上げましたが、負の面も間違いなくあります。
例えば航空会社の衰退や、流通の停止は、多様性へと進みつつあった社会をまた過去に戻すかもしれません。
中国の工場停止や、それに伴う国産化は、製品コストの増大や新製品開発の阻害を呼ぶことでしょう。更にそもそも経済の打撃からくる影響は計り知れません。

しかし今回のコロナ不況や、コロナウイルスそのものに対する行動から、人類がまた一つ課題をクリアできるのならば、それはもちろん良いことです。
更にそこから、発展途上国の衛生問題や、SDGsで挙げられている諸問題に対して、人類が一丸となって取り組むならば、すべての人の幸福に近づくことでしょう。

とにかく犠牲者が少なく済み、社会が正しい方向に進むことができるよう、今はただ祈ります。

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Published by
安藤隆史