「Prime Video Linear TV」AmazonがプライムサービスにライブTVを追加する可能性

NetflixやDisney+等と肩を並べるサービスとして、AmazonPrimeVideoがあります。
Amazonのあらゆるサービスと紐付いているため、純粋な会員数の比較はできませんが、決して無視できない規模のビデオ配信サービスです。

そのAmazonPrimeが、どうやらライブTVコンテンツの配信を検討しているのではないか、という噂が今週持ち上がってきました。
もちろんどの映像サービスでも、その可能性はあるのですが、今回の噂には情報源があります。
ライブTVを行うための求人広告が出ているのです。

LinkedInで募集されている求人広告

この募集は、ライブ配信に携わる1人ではなく、マネージャークラスの募集です。

Do you have an entrepreneurial mindset and enjoy working in a fast-moving product space.
We are seeking an experienced Product Manager for the Prime Video Linear TV team to redefine how customers watch 24/7 linear broadcast TV content. Linear TV enables customers to watch 24/7 streams of their favorite TV stations airing programs including sports, news, movies, award shows, special events and TV shows.
You will be responsible for designing the end-to-end customer experience for how customers discover and watch Linear TV content. You will work directly with global business stakeholders to identify opportunities to improve acquisition, engagement, and content selection. You will conduct hands-on analyses to develop a deep understanding of the Linear TV content consumption behavior to develop and prioritize the roadmap. Having one foot in the now, and one foot in the future, you will help invent new ways for customers to explore our catalog of Linear TV content.Actively participate in developing the strategy and roadmap of our long-term revolutionary experience.

https://www.linkedin.com/jobs/view/1837268825/

あなたは起業家精神を持つ、迅速なチームで働くことを楽しむ人ですか?
Prime Video Linear TV チームの経験豊富なプロダクト・マネージャーを募集しています。Linear TV は、スポーツ、ニュース、映画、アワード・ショー、スペシャル・イベント、テレビ番組などの番組を放送し、お気に入りのテレビ局の 24 時間 365 日のストリームを視聴できるようにします。
視聴者がどのようにLinear TVコンテンツを発見し、視聴するかについて、エンドツーエンドのカスタマー・エクスペリエンスの設計を担当していただきます。
グローバルなビジネス関係者と直接協力して、獲得、エンゲージメント、コンテンツ選択を改善を行います。実践的な分析を行い、リニアTVコンテンツの消費行動を深く理解し、ロードマップの開発と優先順位付けを行います。現在と未来に片足を踏み入れ、お客様がリニアTVコンテンツのカタログを探索するための新しい方法を考案することに貢献していただきます。

「Prime Video Linear TV」というネーミングで募集されているこのプロジェクトは、Amazonが24時間365日のストリーミングサービスを検討していることを示唆しています。
しかも、ただ既存コンテンツを配信するだけでなく、スポーツやニュース等、きちんと番組として構成したライブTVを行うようです。

これはなかなか期待できる話ではないでしょうか。

ライブTVの高いハードル

Netflix会員の爆発的な増加が示すとおり、今注目されているのは「オンデマンド視聴」ですが、しかし未だTVを見る人も相当数います。
むしろ時間単位でみれば、「いつでも見られる動画」よりも「ずっと垂れ流されているTV番組」のほうが、圧倒的に多くの時間を割かれているのです。
そう考えると、AmazonがライブTVに手を出すのは自然なこととも言えます。

しかしライブTVには大きなハードルがあるのも事実です。
多くの企業が同じことを考え、そして失敗してきました。

例えばYoutubeTV、「アメリカの主要テレビ局の番組をネットで視聴できる」とう触れ込みで2017年4月に始まりました。しかしあのYoutubeのプロダクトであることを考えると、このサービスは驚くほど知られていません。(なお日本はいまだ提供範囲外です)

同じくソニーも失敗した1人です。「PlayStation Vue」というサブスク制テレビコンテンツ配信サービスを2015年から行っていましたが、昨年1月末にそのサービスは終了しました。
コンテンツ購入コストに、利用者数が追いつかなかったのです。

しかしAmazonがこれらを行う場合、少し事情が変わってくるかもしれません。
Amazonは世界で5指に入る時価総額をもつ企業ですが、行うプロジェクトが赤字であることは珍しくありません。むしろAWS事業が軌道に乗るまでは、ひたすらに赤字を垂れ流すことで有名な企業でした。

それでもここまで大きなモンスター企業になれたのは、ひたすらに投資や新規参入を繰り返し、多くの利用者を囲い込んできたからです。
今では全世界のAmazonPrime会員は1.5億人を突破。
折しもコロナウイルスによる世界的な外出自粛のせいで、通販事業もコンテンツ配信事業も恐ろしく業績を伸ばしています。

もし普通の企業ならば、赤字を生み続けるプロジェクトは早急に閉じてしまうかもしれませんが、Amazonの場合プロジェクト単体が赤字だとしても、それによって会員を囲い込めるのならばまったく問題がないのです。
これこそ、他の企業がまったく太刀打ちできない「Amazonの力」です。

もちろん、未だマネージャーを募集し始めたばかりであり、AmazonがどのようなライブTVを作ろうとしているのか、誰にもわかりません。
プロジェクトが頓挫するかもしれませんし、既存テレビ局のコンテンツをひたすら流すような、面白みのないプロジェクトかもしれません。

しかし、募集要項には次のように書かれています。
「次世代の安心できるライブTV体験を生み出してください」

企業が可処分時間を奪い合い、5Gのインフラが整い、コロナにより生活様式が変化している今、おそらく今後数年で映像を取り巻く世界は大きく変わるでしょう。
これまで多くの変革をもたらしてきたこの”巨人”が、ライブTVの世界で何を行うのか、目を離さず見ていきたいと思います。

Published by
安藤隆史