イギリスのオックスフォード大学と、アストラゼネカコーポレーションの共同研究にて、新型コロナウイルスに対するワクチン(AZD1222)の臨床試験が行われ、「ワクチンを接種した被験者全員に抗体が確認された」との成果がランセットの医学ジャーナルで発表されました。
オックスフォードのCovid-19ワクチンは良好な免疫反応を示す、新しい研究結果が明らかに
@VaccineTrialsと@OxfordVacGroupのチームは、安全性の懸念がないことを発見した。
※LANCETの原文はこちらから読めます。
今回オックスフォード大学が行った臨床実験では、18歳から55歳までの健康な被験者1,077人が参加しました。
そのうち約500人には開発中の新型コロナウイルスワクチン(AZD1222)を接種、その他のメンバーにはプラセボとして髄膜炎ワクチンが接種されました。
結果として、新型コロナウイルスワクチンを接種された全ての参加者に、抗体反応が見られたとのことです。
また、副作用として「痛み、発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛」等がみられましたが、いずれも深刻な反応ではなく、鎮痛剤に寄って軽減されたとのことです。
免疫反応は14日でピークに達し、その後56日でわずかな減少が見られました。
今回更に素晴らしいのは、もう一つ武漢の研究者グループにより、同じような抗体反応の存在を得られた研究が発表されていることです。
この臨床試験は1077名が参加。603名の参加者にワクチン(Ad5)が接種されました。
こちらも抗体が確認され、目立った副作用は出なかったとのことです。
可能性のあるワクチンが複数あることは、「ワクチンの開発成功」に対して非常に前向きな要素です。
参照:https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31604-4/fulltext(英語)
「9月までに投与量を生産する予定」と、アストラゼネカの代表パスカル氏は語っています。
実際「ワクチンそのもの」の製造法がわかれば、量産するのは難しいことではないでしょう。
アストラゼネカは世界各国の政府と協定を結んでいるので、当局の承認を得たワクチンを開発できた場合、世界中で一斉に生産が開始されます。
もちろん日本とも協議しており「第一三共株式会社」「Meiji Seikaファルマ株式会社」「KMバイオロジクス株式会社」と協力して、ワクチンの安定供給を目指すことを合意しています。
アストラゼネカは新型コロナウイルスを営利目的で販売しようとはせず、いち早く世界中で摂取できるようにする、という方針を掲げており、
参照:https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2020/2020062601.html
ただし、まだ承認が下りた段階ではなく、ワクチンの後期試験が残っています。
後期試験はより大規模な人数による試験です。
特に「一度罹患して回復した患者に対して、ワクチンがどのような影響を及ぼすか」という点がまだわかっておらず、更に調査を進める必要があるとのことです。
「9月」までの生産はあくまで希望的な見通しであり、確実なスケジュールは現在も白紙のままです。
未だ実験を残しているとはいえ、このニュースは世界に対して大きな「福音」です。
日本では重傷者も少なく、元の生活を取り戻しつつあるように感じるかもしれませんが、欧米では重症率も高く、医療従事者は死のリスクを抱えながら働いています。
しかしワクチンさえ完成すれば、新型コロナウイルスによる致死率を一気に引き下げることができます。
また大規模な人数が動員される産業や、身体的接触が避けられない仕事、コロナ禍により衰退せざるを得なかった業種についても、ワクチンが完成することでよりよいサービスを提供できるようになるでしょう。
特に大きく制限されていた海外旅行等も、コロナ以前と同じぐらい自由に行けるようになるかもしれません。
どうか後期試験も上手くいき、いち早く世界中でワクチン接種が行われ、ほんとうの意味での「Afterコロナ」が到来することを願います。
参照:https://www.sbs.com.au/news/oxford-coronavirus-vaccine-is-safe-and-triggers-strong-immune-response-human-trials-show(英語)
https://techcrunch.com/2020/07/20/covid-19-vaccine-trials-from-the-university-of-oxford-and-wuhan-both-show-early-positive-results/(英語)