コラム政治・経済

ウィズコロナ時代のニューノーマルとは何か? ビジネスと働き方はどう変わるのか?

「ニューノーマル」という言葉が頻繁に使われるようになってきた。
これは、新型コロナウィルスの感染流行が終息したとしても、人々の暮らし方や社会の在り方が、まったくの元通りには戻らないだろうということを示している。
そこには、新しい「常体」や「常識」が現れるだろうということだ。
たとえばお店などの施設に入場する際には必ずアルコールで手を除菌することや、大勢の人が集まる際には社会的距離を確保することなどが習慣として残るかもしれない。
となると、当然ビジネスの現場や働き方にもニューノーマルとなる変化があるはずだ。
それは、どのようなことだろうか。

ニューノーマルとは何か

ニューノーマルとは、社会的な影響を及ぼす出来事によりもたらされる新しい常体や常識を示す。
元々は2008年のリーマン・ショック後の景気後退で生じた金融上の新しい常体・常識を示す言葉として登場している。
その後2016年3月22日に発生したブリュッセル連続テロ事件を受けて、『The Economist』がニューノーマルという言葉を使っている。(※1)
そして今年(2020年)、新型コロナウィルスの感染拡大により、それ以前とは異なる新しい常体・常識が定着することを示す言葉としても使われ出したのだ。

※1 『Bombings in Brussels – The new normal | Leaders | The Economist』

非接触型の消費への変化

私たちが身近に感じるニューノーマルとしては、消費活動が非接触型になったことだろう。
スーパーや飲食店では、店員がマスクはもちろんのこと、フェイスシールドを装着して手袋を嵌めていたり、レジは透明なアクリル板やビニールシートにより仕切られている。
また、現金のやりとりも直接の手渡しを避けてトレーで行ったり、ポイントカードのスキャンも客が自らカードリーダーに読み込ませるようにして、店員がカードに触れないようにしている。
レジに並ぶ際にも、床に記された線に従って客同士の距離を維持することが推奨された。
さらに、試食や実演販売、タイムセールなどの人が集まることで感染リスクが高まりそうな販売手法は自粛された。
悲惨なのは、人々が寄り集まる飲酒店やライブハウス、映画館などは休業か営業時間短縮に追い込まれたことだ。
一方、急激にニーズが高まったのは、やはり非接触型のデリバリー販売やネットショップだった。
いわゆる「3密」を回避しながらの消費行動が要請されたのだ。
このような過剰な反応困惑している人も多いだろう。
しかし、もはや社会には新しい常体・常識が生まれつつあることには抗いようがない。これこそニューノーマルなのだ。

ニューノーマルはデジタル化を促進する

このように、消費行動が非接触型になり、できるだけ外出もしない巣ごもり型になると、店頭でのキャッシュレス化やネットショップにおける電子決済の需要が高まる。
また、後ほど改めて触れたいが、働き方においても通勤ラッシュやオフィスへの出社も控えることが推奨されたため、テレワークへの需要が高まった。
当然、BtoBにおいても、可能な限りリモートで取引を行うことが要請された。
つまり、新型コロナウィルスの感染拡大がもたらしたニューノーマルは、消費活動やビジネスの現場でのデジタル化を促進する圧力となっているのだ。

ニューノーマルが「働き方改革」を加速させる

皮肉なことに、2019年4月1日から働き方改革関連法案の一部が施行されたことよりも、新型コロナウィルスの感染拡大の方がドラスティックに働き方を変えてしまった。
たとえば、働き方改革が叫ばれても通勤ラッシュに対する目立った対処は行われなかったが、新型コロナウィルスの感染拡大が起きると、すぐさま業務上可能な限り在宅勤務が推奨され、実際に実行された。
中には、その結果としてオフィスを縮小したり閉鎖してしまう企業も出てきている。
また、テレワークかできなかった職場でも、可能な限り会議室に集まることは避けられ、メールやチャット、グループウェアなどによりオンラインで情報交換・共有を行うことが進められた。
そしてそれまでパーティションで仕切られていなかったオフィスでも、デスク間には急ごしらえの仕切りを設置したところも多いはずだ。
当然、仕事が終わった後も、皆での飲みニュケーションを行う機会などは激減しただろう。

新型コロナウィルスの感染拡大により半ば強引にテレワークに切り替えられた人たちも多いと思うが、テレワークという働き方はニューノーマル化するだろう。
というのも、テレワークを体験した多くの人が後戻りできなくなっているようだからだ。
6月21日に、西村康稔経済財政・再生相がテレワークに関する調査結果を発表している。(※2)
調査は内閣府がインターネットで行い、全国約1万人から回答を得ている。
その結果によると、テレワークの経験者は全国で34.6%、東京23区で55.5%だった。この東京23区の55.5%の内、テレワークを継続したいと回答した人は、9割にも上ったという。
しかもこの成功体験は東京一極集中を緩和させる効果がありそうだ。東京23区に住む20代では、地方へ移住することに関心を高めた人が35.4%もいたという。

※2 『新型コロナ:テレワーク、全国で34%が経験 東京55% 内閣府調査  :日本経済新聞』

ニューノーマル時代の働き方

このような働き方の変革について、マイクロソフトは以下の様な注意点を示している(※3)ので要約して紹介したい。いずれも留意すべき点である。

●燃え尽き症候群の危険性

多くのワーカーが仕事中は休むことなく働こうとしているため、在宅勤務中の従業員に夜遅く仕事の連絡が入ることなどに関して、労働時間の境界線に注意せねばならない。

●キャリアアップに関する懸念

在宅勤務をしている従業員のパフォーマンスの測定方法を見直さなければ、正しく評価されているのかどうかの懸念が生じる。

●柔軟性と共感が必要

自宅での勤務でも気が散ってしまわないような環境作りを支援し、従業員の課題に共感する必要がある。

●技術研修と技術を受け入れる準備

テレワークのツールとなるハードやソフトを最大限に活かせるようになるための研修が必要。

●社会的要素を取り入れる

離ればなれに働く在宅勤務では、組織のイノベーション促進や創造的アイディアの流れを作るために、仲間意識を高めるための方法を模索する必要がある。

※3 『マイクロソフト、アジア太平洋地域におけるハイブリッドでニューノーマルな働き方を予測 – News Center Japan』

ニューノーマル時代への対応力

ニューノーマルの時代が訪れると、これまでの成功体験が必ずしも次の成功を約束してくれるわけではなくなる。
特に新型コロナウィルスの感染拡大といった有事には、前例に囚われない判断をすることの方が合理的な場合が出てくる。
しかし、前例がない方法を選択する決断には勇気と覚悟が必要だ。
このようなときにこそ、経営陣にもリーダーにも、そして働き方を選ぶ側にも変化への対応力が求められる。
これまで変化しないことに安住してきた人たちにとって、ニューノーマルは厳しい変化になるかもしれない。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大が終息すれば元に戻るのだ、と安易に考えない方が良いだろう。

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