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もしあなたの県が明日から中国になったら?出来なくなること

朝起きて、コーヒーを淹れながらあなたがテレビを付けると、ニュースキャスターがこのように言います。
「ニーハオ!今日から〇〇県は中国人民共和国となりました!」

こんな設定が本当に起きるかはともかくとして、この日からあなたの生活は一変します。
「中国人になる」「中国の法律下で生きる」ということはあなたが考える以上に大変なことです。

主要サイト・SNSに繋がらない

「中国になった」というニュースを聞いて、あなたは「何事だ!?」と思ったことでしょう。
このような緊急事態にまず何をしますか?
情報を収集するためにスマートフォンを手にするでしょう。

しかし残念ながらまずgoogle.co.jpが使えません。「流行ってない」とか「サービスを展開していない」という問題ではなく、まず繋がらないのです。

中国のネットには「金盾(グレートファイアウォール)」と名付けられた検閲システムが導入されています。
学校からネットをした際、つながるサイトが制限されていたかと思いますが、あのような仕組みが全てのネットに適用されていると思ってくだい。
あなたの自宅のパソコンも、スマートフォンも、全てに適用されています。

次にあなたはtwitterで情報を集めようと思うかもしれません。世界中がどのような反応をしているか知るには、twitterが一番です。
しかしtwitterも繋がりません。InstagramもFacebookも繋がりません。
主要SNSと言われているこれらのサービスは、全て中国からは遮断されています。

「だめだ、とにかくLINEで友人にメッセージを送ろう」
参ってしまったあなたはLINEのアプリを立ち上げます。
……そろそろ察するかもしれませんが、もちろんこれも繋がりません。
「wechat(微信)」というアプリが代替品としてあるのですが、これは最近話題になっている米中対立に巻き込まれており、主要端末で使えない、もしくは中国国内でしか使えないよう措置が取られる可能性があります。

「そうだ!」あなたはひらめきました。
「tiktokなら中国のアプリだからつながるはずだ!tiktokで情報を仕入れることができるかもしれない!」

あなたはおもむろにtiktokのアプリを立ち上げますが、残念ながら求める情報はそこにはないでしょう。
中国においてtiktokはもちろん存在していますが、完全に別のサービスとして分けられています。中国のtiktokから海外の書き込みを見ることはできません。
(一応他の国から中国語版tiktokにアクセスすることはできますが、中国に不都合なことを書き込めばすぐに削除されてしまいます)

他にもYoutube、Netflix、ウィキペディア、Amazon.co.jp、ニコニコ動画、pixiv等、多岐に渡ってアクセスできないサイトが存在します。
もちろんWeChat、百度等、代替品は存在していますが、アクセスできる情報は限られています。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E6%A4%9C%E9%96%B2

「都市戸籍」と「農村戸籍」

もしあなたの地域がいきなり中国になったら、戸籍を確認しましょう。
同じ中国人であっても、「農村戸籍」なのか「都市戸籍」なのかで、生活は大きく違います。

「農村戸籍」ならば、大学に進学したり、それなりの企業に就職するのはかなり難しいです。
たとえ成績が上位だとしても、「農村戸籍」の人は容赦なく落とされます。万一受かったとしても、都市戸籍の学生より高い学費を払わなければなりません。

就職活動でも、多くの場合、企業の就職条件に「都市戸籍」であることが定められており、まっとうに努力しても都市の会社で働くことは難しいでしょう。

もしモノ好きな経営者が雇ってくれたとしても、都市部で行政サービスを受けることは非常に困難です。万一入院や怪我でもした場合、高額の医療費を払うことになります。たとえ保険に入っていたとしても、そもそも農村戸籍の人が入れる保険は制限されており、都市戸籍用の保険よりも自己負担が大きくなっています。

逆に農村戸籍には農地や宅地の提供等が行われます。農業を行うことはできますし、もし幸運にも「土地を貸してほしい」と企業から依頼でもきた日には、遊んで暮らせるかもしません。(もちろんそんな人はわずかですが)

※現在一部都市では都市戸籍への切り替えや、戸籍の種別撤廃等の動きがあります。ただし、いまだ戸籍の差は存在しています。
※地域によって制度もばらばらなため、この記述に合致しない箇所もあるかもしれません。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%88%B8%E7%B1%8D%E5%88%B6%E5%BA%A6

政府批判を行うと…?

いきなり突きつけられた理不尽に対し、あなたは感じます。「中国共産党はひどすぎる」と。そして怒りのあまりネット上にそれらを書き込んでしまいました。
どうなるでしょうか?

深夜なのにインターフォンが鳴り、ドアを開けると警察が……とは流石になりません。あれだけの人数がいる中国です。片っ端から裁いては手が足りません。

ただし、書き込みはすぐに消えます。

「微信(ウィーチャット)」や「百度(バイドゥ)」など政府公認のアプリは定期的に監視され、オンラインでのやり取りで用いることを政府が禁止したキーワードや、禁止に相当する可能性のある画像が自動的に検出される。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-18/QC2PIWDWRGG301

また、香港をめぐる一連の騒ぎにより、これらの検閲は強化されています。
つい先日、党員に対して「家族間でも習総書記の地位を貶めるような発言をしない」よう通達があったようです。

中国の習近平指導部が共産党・政府の機関に勤める党員に対し、家族との会合を含むプライベートの時間に習総書記(国家主席)の地位をおとしめたり、党・政府に批判的なウェブサイトを閲覧したりすることを禁じる内部通知を出していたことが26日、分かった

https://news.yahoo.co.jp/articles/35085f82a561c3643bf1e0d759708df2e90b46d1

そしてそういった批判から「行動を起こそう」と考えたり、同じ考えの人間で「集まろう」した場合、一気に危険度は高まります。
それらが「国家からの離脱、転覆行為、テロリズム」と認定された場合、3年以上・最大で無期の懲役に課せられるかもしれません。
また、もしそのような罪で有罪となってしまった場合、あなたは二度と選挙にでることはできなくなります。「政治家になって国を変えよう」ということはできません。
裁判も公開で行われるとは限りません。非公開のまま行われ、誰に知られることもなく、刑が執行されるかもしれません。

参照:https://www.bbc.com/japanese/53244732

「自由」は当然ではない

これらの出来事は、現在多くの香港人が経験していることに近いです。
これまで香港の多くの人は、日本人と同じようにネットを楽しみ、外国に旅行に行ったり、移住したりといった夢を持ち、自由に言論を通わせていました。

しかし「一国二制度」の制度が終わり、「香港国家安全維持法」が施工された今、これまで「当たり前」にしてきたことが、できなくなっています。

そして今回ここに書いた以外にも、「ウイグル人への迫害」「書籍・漫画の検閲」「信教の制限」等、色々な自由が中国で奪われているのです。

コロナ禍で世界中が混乱し、多くの国が自国のことで手一杯になっている今、中国は攻勢を強めています。
「すぐに日本を軍事的に攻めてくる」と考えるのは、もちろん現実的ではありませんが、隣国である以上、無関係な問題ではないでしょう。

ネットの「正」の面だけ見ると、多くの人が自由であり世界が一つであるように感じるかもしれませんが、中国を含めたいろんな国で、まだまだ「自由」は手に入らない貴重なものです。
せめて「自由」を手にしている私達は、その「自由」がどれだけ大切なもので、「自由」を守るために行わなければいけないことは何なのか、考える必要があると思います。

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