Black Lives Matter、通称「BLM」とは、アフリカ系アメリカ人に対する白人警察官の残虐的な行為に抗議して「不服従」を唱える組織的な運動のこと。
日本ではプロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手の抗議活動を通じて知った人も多いことでしょう。
BLMはアフリカ系アメリカ人にとっては非常に重要な問題ですが、私たち日本人にとっては「なぜそこまで抗議するのか」と思う人もいるはず。
正直言って、アフリカ系アメリカ人を取り巻く差別問題をそこまで知りませんよね。
だからこそ、「ちょっとやりすぎなのでは」と思う人もいるかもしれません。なぜ多くのアフリカ系アメリカ人がBLMを支持しているのか。そこにはちゃんとした理由が存在します。
それを知れば彼らの根底にある怒りが見えてくることでしょう。
具体的にどんな差別が行われて、アフリカ系アメリカ人は怒っているのか。「経済」と「犯罪」という切り口からデータを見て、検証してみましょう。
まず紹介するのは、フォーブスより発表された経済的な側面からみるアフリカ系アメリカ人に対する差別構造です。
他の人種世帯とアフリカ系アメリカ人世帯をくらべた、経済格差のデータといってもいいでしょう。
生活に直結にする「失業率」など、アフリカ系アメリカ人と他の人種の間にはかなりの差があることがデータで見て取れます。
経済的データだけで「人種間差別がある」と言い切るには難しいかもしれません。
しかし「アフリカ系アメリカ人とそれ以外だとここまで経済的に差があるのか」という気づきを得るには十分なデータとなっています。
彼らの怒りの一端を知るには十分な情報になるでしょう。
2020年5月、アフリカ系アメリカ人労働者の失業率は16.8%だったのに対し、他の人種労働者の失業率は12.4%でした。
新型コロナウイルスによるパンデミック前のアフリカ系アメリカ人の60%が職がありましたが、現在はその半数まで減少しています。
なお、新型コロナウイルスによる自粛などが原因で廃業を余儀なくされた会社は数多くありますが、5社のうち2社はアフリカ系アメリカ人が経営する中小企業でした。
一方で、他の人種が経営する企業になると、廃業まで追い込まれたのは5社に1社にとどまっています。
米連邦準備制度理事会(FRB)によると、アフリカ系アメリカ人世帯の純資産中央値は1万7150ドルであり、同時期の他の人種の世帯純資産中央値は17万1000ドルと10倍もの差がつきました。
また、新型コロナウイルス感染拡大真っ只中の5月。住宅ローン支払いができなかった、あるいは延期したアフリカ系アメリカ人の割合は28%にまでのぼることに。
一方で他の人種の住宅所有者では9%と、アフリカ系アメリカ人の3分の1程度です。先ほど紹介した失業率が、かなり影響してきているのでしょう。
なお、アフリカ系アメリカ人世帯が持ち家に住む確率は、他の人種世帯に比べて40%も低いというデータもあります。
経済的に問題があると持ち家を所有するのはかなり難しいです。
アフリカ系アメリカ人とそれ以外で経済的な差がついているのであれば、持ち家所持の確率に差がつくのも当然といえば当然の結果といえます。
次は犯罪データから読み取るアフリカ系アメリカ人の差別構造です。
経済的データとは違い、明らかに差別があると言わざるを得ないほどの格差が、アフリカ系アメリカ人と他の人種の間には生まれています。
ここまで差がつくのは何らかの感情的バイアスがかかっているといっても過言ではないといえるのではないでしょうか。
今まで何も知らなかったのであれば、きっとびっくりすると思いますよ。
IRONNAによると違法薬物を使用する割合は、他の人種もアフリカ系アメリカ人も同程度です。しかし、逮捕される割合はアフリカ系のほうがはるかに高くなっています。
2018年、アフリカ系アメリカ人は、10万人あたり約750人が薬物関連で逮捕されました。対して他の人種のアメリカ人は、10万人あたり350人という結果に。
なお、マリフアナの使用率はどの人種もほぼ同じなのにも関わらず、マリファナ所持の疑いでアフリカ系アメリカ人が逮捕される確率は他の人種の3.7倍もの差がついています。
同じくIRONNAによるとアフリカ系アメリカ人が刑務所に収監される確率は、他の人種の5倍にものぼります。
アフリカ系アメリカ人10万人あたり1000人以上が刑務所に収監されているなか、他の人種は10万人あたり約200人が刑務所に収監されているという結果に。
アフリカ系アメリカ人の収監率そのものは過去10年で下がってはいるものの、刑務所人口では他の人種より圧倒的に多くなっています。
フォーブスによると2015年1月以降、警察の発砲による死者は4728人で、アフリカ系アメリカ人1252人でした。
人口比だとアフリカ系アメリカ人は全米の人口の13%弱です。
それにもかかわらず、人口100万人あたりの発砲死者数はアフリカ系アメリカ人30人に対して他の人種12人と圧倒的な差がついています。
経済的データ、犯罪データ双方を見てもわかるように、アメリカでは人種間の差別が根強く残っています。
ここまでの差があるとは思っていなかった人も多いのではないでしょうか。
アフリカ系アメリカ人の人口比率が30%のシカゴでは、新型コロナウイルスによる死亡者の60%をアフリカ系が占めている、というデータもあります。
また、ニューズウィークによるとニューヨークでは、アフリカ系アメリカ人の人口比率が18%なのに、新型コロナウイルスの入院患者の3人に1人がアフリカ系という、いびつなデータもでています。
このように経済・犯罪以外の視点以外でもアフリカ系アメリカ人に対する差別構造は簡単に浮き彫りにすることができるのです。
なぜBLM運動がここまで広がっているのか、それは彼らの溜まりに溜まった不満や怒りが爆発したから、ともいえます。
このような統計を知ることで、その背景の一部を知る機会ができたのではないでしょうか。