「来月の報告書で大統領を驚かせたい」
そんな素直なつぶやきから、フォロワーが爆発的に増加してしまい、自国政府アカウントを超え、更には自国民の人口すら超えてしまった観光局のtwitterアカウントがあります。
「ナウル共和国政府観光局」@nauru_japanです。
今まで、「社長を驚かせたい」といった企業公式twitterはありましたが「大統領を驚かせたい」は初めて見ました。
「自分たちのフォローで他国の大統領を驚かせられる…?」という不思議な状況に火が付き、フォロワー数は一気に増加しました。
そもそも10月1日時点で立ち上げたアカウントなので、この1週間でフォロワー数が2万人近くまで増えた計算になります(記事執筆時点で26,000人)
しかし、実際の所「ナウル共和国」とはどんな国なのでしょうか。
ご存じの方は(失礼ながら)多くないかもしれませんが、実は日本と密接に関わりのある国であり、そしてある意味「知っておかねばならない」国なのです。
まずナウル共和国の位置からご説明します。
日本より少し東の赤道直下にある島です。日付変更線よりは西なので、日本より早く一日が始まる国です。
近隣にはミクロネシア連邦やマーシャル諸島があります。
政府観光局のtwitterbioにもあるとおり、面積は21km²で、品川区とほぼ同じぐらいの広さです。なんと世界で3番目に小さい国です(1位バチカン・2位モナコ)この面積に1万1000人が住んでいます。
品川区には42万人が住んでいるので、それに比べるとだいぶ余裕があります(これは品川区や東京都がおかしいのですが…)
ナウル共和国には首都がありません。強いて言えばヤレン地区(赤い四角の場所)に政庁があるのでそこが首都と言えなくもないのですが、国全体でも品川区ぐらいの面積ですので、”首都”と設定する必要もないのかもしれません。
あまり日本と関わりがないのでは……?と思うかもしれませんが、第2次世界大戦時、ナウルは日本が占領していた時期がありました。
1941年に侵攻。1942年には占領しています。ハワイに比較的近いナウルは、戦時の拠点として適していたのです。強制連行等も行われ、多くの島民が死亡したとの記録もあります。1945年には終戦したので3年ほどの占領期間でしたが、決して小さくない被害を受けています。
今でも島には、日本軍が残した高射砲や、刑務所跡等の戦争遺跡が残っているとのことです。
日本から独立後、ナウルはリン鉱山で栄えました。
アホウドリ等の渡り鳥がナウルによく滞在するため、その糞が堆積し、リン鉱石をたくさん取ることができたのです。
リン鉱石は化学肥料の原料や殺虫剤、他にも調味料や金属加工や洗剤やら身の回りのあらゆるものに使われています。
そのため一時は太平洋地域で最も豊かな国、と呼ばれていました。
全国民に年金が支給されたり(年齢制限なし)、税金もなく医療費・教育費は無料、というまさしくユートピアのような国です!
……しかし、ナウルの面積で何年も採掘ができるほど、リン鉱石が蓄積されてはいませんでした。
2000年頃にはリン鉱山の枯渇で経済が破綻します。
この時期、ナウルにとって試練の時期でした。
・10年で16回政権交代したり、
・ナウル航空の航空機が差し押さえられたり、
・「誰でも銀行が作れる」ようにして各国のお金が舞い込んだのはいいものの、・ライセンスを取り消されて制裁されたり、
・パスポートを販売してみたり、
・電話線が故障して、文字通り『絶海の孤島』になったこともあります。
(このあたりは歴史として興味深いのですが……住んでいる人にとっては死活問題だったでしょう…)
しかし、オーストラリアからの支援や、リン鉱山二次採掘技術、必死の外交策等もあり、近年ようやく立ち直りつつあるようです。
そのように頑張っているナウル共和国、もちろん現在も問題が無いわけではありません。
リンの二次採掘も枯渇した場合どうしよう?…とか、オーストラリアからは財政支援の代わりに、難民を送られたり等、色々と解決すべき問題はあります。
しかし、それは日本だろうとアメリカだろうといろいろな問題があるので、そこまで特別なことではないでしょう。
逆に身動きが取りやすいので、あらゆることを試すことが可能です。
それにナウルへ観光に行った人たちは、ゆったりとして生き急いでいないこの国の雰囲気をとても楽しんでいました。
個人的には、今の日本に必要なものがあるのではないかと思います。
そして今回、観光局アカウントを解説し10日たらずで2万人もの日本人フォロワーがついたことは、ナウルにとって大きな転換点になるかもしれません!
早速日本人のビザ免除等ができるかどうか、観光局アカウントの中の人がかけあってみるとのことです。
休暇をハワイで過ごす日本人は多いですが、ナウルも距離的にはハワイと同じか、むしろ近いです。コロナ禍が終わり、海外旅行ができるようになれば、ひょっとしたらナウル観光が流行るかもしれません。
(失礼な言い方になるかもしれませんが、ナウル共和国の規模で、日本との国交や日本人観光客がたくさんくる、というのは結構大事ではないかと思います)
SNSが発端となって起きた今回の出来事。ぜひ両国にとっていい歩みになってほしいと、切に願います。