ひとまずバイデン氏の当確が決まったアメリカ大統領選挙、同盟国である日本にとっても大きな影響がありますが、もっと戦々恐々としている国もあります。
お隣韓国です。中国と北朝鮮といういわば「レッドチーム」から常に睨まれている韓国では、アメリカがどのようなポジションを取るのかで大きく経済や外交状況がゆらぎます。
それ以外にも、輸出で利益を得ている韓国にとっては、米国の方針が大きな影響を及ぼします。
大韓商工会議所は8日、産業界と分野別専門家の意見をまとめ、「バイデン当選は通商、原油価格、為替レート、産業、対北朝鮮政策など韓国経済の全方向に大きな影響を及ぼすだろう」と分析しました。
特に通商分野で米同盟国の連帯要求が高まると予想しています。
ひとまず、バイデン政府は従来のトランプ政府に比べ、通商摩擦の不確実性が減り、貿易も活性化するでしょう。 もし、自由貿易の基調が直ちに回復されなくても、国際通商秩序が尊重されれば、国際貿易が全般的に再活性化し、国内輸出企業にも好材料になりうるという分析です。
しかし、バイデン氏が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の加入を再び推進すれば、韓国も参加の圧力を受ける可能性があります。
そうなった場合、そもそもTPP加入に韓国国民が賛成するか、といった問題もありますし、国内企業にとって新たな形の貿易障壁になる可能性があるという見方もあります。
TPPに加入した場合、いままでどっちつかずだった「米国・中国どっちにつくのか」といった点で、旗幟を鮮明にした形となります。
中国から圧力を受けることは避けられませんし、北朝鮮を使ったハラスメントを受けるかもしれません。なかなかに四面楚歌です。
大韓商議は対北朝鮮政策についても大きく変化するでしょう。
トランプ大統領はとにかくトップ同士で話をする手法を好みましたが、バイデン氏は外交官や閣僚等と細かい点を打ち合わせて、最終的な合意に持っていく、従来どおりの外交を行う確率が高いです。
聞こえは良いものの、交渉が実際に引き延ばされる場合、北朝鮮の不満が挑発として表出される恐れがあります。
崇実(スンシル)大学政治外交学科のイ·ジョンチョル教授は「米国が新しい政策官僚を任命して対北政策検討を進める間、北朝鮮が挑発しだす可能性は排除できない」と述べています。
もしくはとにかく北朝鮮を非難し、無視するケースも考えられます。
特にバイデン氏は、北朝鮮の核保有に強硬に反対の立場を示していました。
過去にバイデン氏はTV討論で「キム・ジョンウンは”良い友達”ではなく”暴力団”」と直接的な避難をしています。
特に民主党自体が、人権問題などで支持を得ている政党なので、北朝鮮に優しい顔はできないはずです。
そうなった場合、アメリカと北朝鮮の間ではなく、北朝鮮と韓国の間に火花が散る可能性があります。
「北朝鮮との融和」を図りたい文政権にとっては、あまり好ましくない状況です。
このように、バイデン氏が当選したからといって、韓国が笑顔になれる状況ではないようです。
かといってトランプ氏のままだとしても、文大統領に対してトランプ氏はあまり信用を置いていませんし、在韓米軍の駐屯費負担問題が韓国を苦しめる形となります。
とにかく今は、新しく誕生したバイデン政権と、文大統領がどのようにコミュニケーションを図れるか、そこにかかっています。
韓国の戦いはこれから始まったと思っていいでしょう。