「新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の危機的状況で韓国のように経済規模が大きく発展した国々は、普遍的なベーシックインカムより選別的財政支援(selective financial support)を選択した方が良いでしょう」
2019年ノーベル経済学者受賞者でMITのエスター·デュフロ教授は24日、韓国で行われたカンファレンスでこのように述べました。
エスター氏はノーベル経済学賞歴代最年少(満46歳)受賞者であり、史上二人目の女性経済学賞受賞者です。
彼女は貧困と格差問題を解決するための実証研究として有名です。 配偶者でありノーベル経済学賞共同受賞者であるアブヒジト·バナージMIT教授とともに「大変な時代のための良い経済学」という本を出したりもしました。
デュフロ教授は、韓国の所得格差の解消のためには、ベーシックインカムより「選別福祉」が適していると主張しました。(必要な人を見極めて支援する策)
「新型コロナウイルスの危機を通して、多くの国々が国民に現金を配布する必要性を感じ、各国は多様な政策を展開しました」「新型コロナは全世界的にベーシックインカムに対する新たな議論を呼び起こしました」「韓国はどんな人をいつ支援できるかを判断できる情報を持っており、実質的に助けを必要とする人のためにより多くの支援を行うことができる」とし「普遍的なベーシックインカムの短所は、恩恵対象から誰も排除しないため、非常にお金がかかる」と述べています。
彼女は、高所得者に対する所得税率をむやみに引き上げることが、社会福祉の実効性を落とす、と考えているようです。 同氏は「高い所得に対してより多くの税金を課す装置がなければ、不平等は持続的に増えるだろう」としながらも、「高所得者に非常に高い水準の税金を課すのは政府の予算にそれほどプラスにならない」と述べました。
ドワイト·アイゼンハワー大統領時代、米国の所得税率を例に挙げています。
当時、最も収入が高い層の所得税率は90%を上回っていましたが、会社が高い給与を支払う理由がなくなってしまい、それによって政府収入も増加しなかったということです。 デュフロ教授は「不平等を改善するためには不動産など資産に対する税金を課すことが重要だ」と付け加えています。
「ベーシックインカム」はある種とても平等で、未来が開ける政策のように聞こえることがありますが、社会実験まで行った「フィンランド」や「ドイツ」でも導入には至っていません
AIやロボットが、人間に必要な仕事の大半を賄うようになればまだ話は変わってくると思いますが、新型コロナウイルスという未曾有の危機にあっても、ベーシックインカムへの道がひらけるのはまだまだ先になりそうです。