2020年、仮想通貨が再び高騰しています。
代表格であるビットコインは、11月30日(米東部時間)に最高値を更新。
2017年12月に記録した19783ドルを上回りました。
ビットコインだけに限らず、多くの仮想通貨が高騰を見せ、「仮想通貨バブルの再来か!?」と話題になっています。
一体何が起こっているのか、理解している人は少数でしょう。
鍵を握っているのはDeFiです。
「既存の金融機関がやっていることを人の手を使わずに可能にする。金融機関が数千億円の経費をかけてやっていることを、DeFiなら冗談抜きに1億円でできてしまう。」とも言われいてるDeFi。
Decentralized Financeを略したもので、日本語では分散型金融と呼ばれます。
中央管理者、いわゆる経営者や運営会社などが不在で、誰もが参加、運営できます。
DeFi最大の特徴は、全てがプログラムによって動く点。
例えば、銀行であれば融資や送金を行うのに必ず人の手を介します。
しかし、DeFiであれば、あらかじめ決められたプログラムによって処理されるため、人件費がかかりません。
結果として、人を介さない分取引コストが安く、スピードも早いのです。
また、データは全てブロックチェーン上に記録されるため、改ざんされるリスクがなく、高い透明性も担保されています。
しかし、実はDeFiの定義は非常にあやふや。
人によって微妙に異なっているのが現状です。
上記のような広義の意味で使われることもあれば、「DeFiの理念で作られた仮想通貨プロジェクト」といったように、狭義の意味で使われることもしばしば。
多くの人は「ビットコインと毛並みの違う新しい種類の仮想通貨」とだけイメージしているかもしれません。
今回は狭義の意味のDeFiと定義して解説していきます。
2019年頃からDeFiが話題になり、2020年にはバブルとも言える状況になります。
DeFiプラットフォームによる預かり資産は、2020年6月末には約2,120億円(20億ドル)に満たないほどでした。
しかし、9月には過去最高額となる約1兆1,900億円(112億ドル)にまで高騰します。
DeFiは一体なぜここまでの人気を集めたのでしょうか。
主な要因はイールドファーミングブームによるものです。
「仮想通貨を預けておくだけで資産を増やせる」として人気を博しています。
仕組みとしては、とあるプロジェクトのスマートコントラクトに仮想通貨を預けることにより流動性を提供、それに対して報酬が貰えるというもの。
ほとんどのケースでは、報酬としてそのプロジェクトのガバナンストークンを入手できます。
※ガバナンストークン:運営権を持つトークンのこと。イメージとしては株式に近いです。
そしてそのガバナンストークンが値上がりしていけば、その値上がり分がそのまま資産の増加につながるわけです。
預けた仮想通貨はあくまで預けているだけなので、目減りすることはありません。
流動性を提供するだけで新たな仮想通貨が手に入ることから、流動性マイニングとも呼ばれます。
このイールドファーミングブームのきっかけとなったのがCompoundです。
Compoundは仮想通貨を貸し借りできるプラットフォーム。
保有している仮想通貨をCompoundに預ければ利息を得られ、仮想通貨を借りたい人はそこから借りることができます。
このCompoundが2020年6月、仮想通貨を預けている人に対し、ガバナンストークンであるCOMPを無料配布。
無料配布は4年間にわたり、COMP総発行数の4割強の4,229,949COMPが、Compoundユーザーに配布されることが公表されました。
つまり、Compoundに仮想通貨を預けるだけで、利息+COMPを得られるようになったのです。
そこへ投機資金が流れ込み、COMPの価値が高騰。
DeFiプロトコルにおける銘柄として一気に首位に躍り出ます。
その結果、COMPに続けとばかりに同じような仕組みを採用したDeFiプロジェクトが急増し、一気にブームとなります。
DeFiのほとんどはイーサリアムを基盤として作られてるため、必然的にイーサリアムの需要も急増し、その価格は高騰。
それに引っ張られるかのようにビットコインを始めとした仮想通貨も高騰していきました。
これが、2020年に仮想通貨バブルが起きた主な要因です。
しかし、徐々にそのブームは落ち着きを見せ始めています。
原因は「プロジェクトの乱立」と「手数料の高騰」です。
ほとんどのDeFiプロジェクトにおいて、そのコードはオープンソースとなっているため、誰でも簡単に見ることが可能です。
そのため、コードが次々とコピーされ、似たようなプロジェクトが乱立していきました。
信頼性に疑問符の付くプロジェクトが多く生まれたのも必然と言えます。
有名な例としてSushiSwapが挙げられるでしょう。
イーサリアム上の分散型取引所(DEX)として人気を誇っていたUniswap。
そのUniswapにガバナンストークンの仕組みを取り入れたサービスがSushiSwapです。
当初はそのお遊びのような名前から懐疑的な見方が多かったものの、いざ8月29日にガバナンストークンであるSushiトークンの配布が始まると、あっという間にブームは過熱。
Uniswapで取引される資産の約7割を占めるほどにまで成長します。
しかし、Sushiトークン配布から1週間後の9月5日、創設者であるシェフ・ミノは、自身が保有するSushiトークンを売却。
その額はなんと約14億円。
短期間で恐ろしいほどの利益を得ることに成功するのです。
この行動には「詐欺じゃないか」と非難が殺到。
それに伴いSushiトークンの価値もあっという間に暴落してしまいました。
ちなみに、後日シェフ・ミノはこの行動を謝罪。
Sushiトークンを売却して得たイーサリアムを、プロジェクトの基金に戻したことを発表しています。
DeFiによる最大の課題が手数料の高騰です。
イーサリアムを基盤として作られたDeFiのあまりの人気により、ネットワークは大混雑。
それに伴い、イーサリアムブロックチェーンの取引手数料(ガス代)も跳ね上がります。
データ企業のグラスノード(Glassnode)によれば、イーサリアムブロックチェーンの取引手数料の平均は、2020年のはじめ頃には約8円(8セント)ほどでした。
しかし、過去最高を記録した9月2日においては、なんと約1,546円(14.58ドル)もかかるほどに。
その結果、「最低でも500万円は預けないとダメ」と言われるほど、イールドファーミングで利益を得ることが難しくなってしまいました。
これは仮想通貨の手数料は金額によらず一律であるためで、少額の取り引きでは利益がなくなるどころか赤字になってしまうのです。
この手数料の高騰により、イーサリアム・DeFi関連の取引は減少。
DeFiブームも落ち着きを見せ始めると同時に、イーサリアムの取引手数料も減少、通常レベルに戻りつつあります。
しかし、デジタル・アセット・データのアベンドシャイン氏はこう警鐘を鳴らします。
イーサリアムユーザーが安心できるのは一時的かもしれない。
新たなDeFiプロトコルが人気を集めたり、イーサリアム(ETH)の価格が持ち直せば、手数料はすぐに高騰する可能性がある。
2020年のDeFiブームは、バブルとも言えるような状況でした。
これはSushiSwap騒動などを見ていれば明らかですし、現に11月にはかなり勢いが落ちてきています。
では、2017年のICOバブルと同じ道をたどってしまうのでしょうか。
実は、イーサリアムの取引手数料の高騰に伴い、イーサリアム以外を基盤としたDeFiの開発が進んでいます。
これにより、イーサリアムへの一極集中がなくなり、課題だった取引手数料が改善されようとしています。
バブルとも言える盛り上がりはなくなりつつありますが、むしろ底堅い市場が姿を現しつつあると言えるのかもしれません。
ただし、DeFiはまだまだ黎明期。
詐欺まがいのサービスも存在している等、高いリスクを有しています。
DeFiへの参加はくれぐれも慎重に行いましょう。