忙しい毎日を送る現代人にとって、今や手軽に必要な栄養素が摂れる「健康食品」は必要不可欠となっています。普段の食事から十分な栄養を摂取することが理想ですが、なかなか難しいのが現実です。
最近では、「ネスレ ミロ」や「養命酒」が身体にいいとSNSで話題になりました。健康食品と一口に言っても幅広く、含まれる栄養素や、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」といった認可の種類もさまざまです。
こちらの記事では、健康食品の種類や商品選びの注意点などについて説明します。商品の表示を見て判断できるよう、違いや見分け方を理解しておきましょう。
今年の夏頃からSNSで話題の「ミロ活」をご存知でしょうか?ツイッターで、「鉄分が平均の1/7しかなかった女性が、ネスレのミロを飲んだら平均値になった」という投稿が注目を集め、ミロを飲み始める人が急増。貧血に悩む女性を中心に口コミが拡散し、「ミロ活」という造語が生まれました。
その後、メディアでも取り上げられたことから、店舗での売り切れが続出。現在は、「安定した供給の継続が困難」ということで販売を休止しています。
「ネスレ ミロ」は、カルシウム・鉄・ビタミンDを豊富に含む、栄養機能食品です。ココア風味で甘くておいしい上に、健康に役立つとあって、人気が高まりました。
販売再開は来年3月以降になるとの見通しですが、他に代用できる商品もあります。下記の説明を読んで、数ある健康食品の中から、自分の健康に合った商品を選びましょう。
一般的に「健康食品」とよく言いますが、実は日本で使われる「健康食品」という言葉に明確な定義はありません。「健康機能食品」「栄養補助食品」「サプリメント」など、さまざまな呼称があるものの、それぞれのはっきりとした区別はないのが実状です。
アメリカの法律では「dietary supplements(栄養補助食品)」とは、「錠剤、カプセル等の医薬品のような形状の食品であって、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、生薬等の植物由来成分等を摂取するもの」と定められています。
一方で、日本では「サプリメント」や「栄養補助食品」などをまとめて「健康食品」と呼び、「健康に何らかの良い効果が期待できる食品」という意味で使われています。そのため、人によって「健康食品」の意味が違う場合もしばしばです。
「健康食品」は広い意味で使われていますが、厚生労働省が国としての「保健機能食品制度」を設け、食品の安全性や有用性の基準を定めています。そして、保健機能食品は、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3カテゴリーに分けられます。
対象食品:健康の維持・増進に対して科学的な根拠が認められた食品
国の審査:厚生労働省の審査が必要
届出・承認:食品ごとに消費者庁長官が許可
可能な表示:トクホマークが表示できる
対象食品:ビタミン・ミネラルなどの指定された栄養成分が上・下限値の範囲内で含まれる食品
国の審査:不要
届出・承認:不要
可能な表示:国が定めた表現で機能性の表示が可能
対象食品:健康の維持・増進において科学的根拠のある機能性を有した食品
国の審査:不要
届出・承認:販売前に消費者庁長官へ届出が必要
可能な表示:事業者の責任で機能性の表示ができる
以上の3つを総称して、「保健機能食品」と呼びます。
「特定保健用食品(トクホ)」は、国によって定められた厳しい認定基準をクリアし、商品ごとに有効性や安全性が認められた食品のこと。「栄養機能食品」は、ビタミンやミネラルなど、すでに科学的根拠が認められた栄養成分の基準量を含んでいる食品に使用できます。
対して、「機能性表示食品」は、機能性が表示できる食品の選択肢を増やすために取り入れられた表示制度です。おおむね「特定保健用食品(トクホ)」と同様ですが、国の審査は不要です。そして、事業者の責任において機能性を表示している点が異なります。
機能性の表示が許可されているのは、「保健機能食品」に該当する食品のみです。
「健康食品」には、国が定める「保健機能食品」以外にもさまざまな種類があります。
乳児の発育や、妊産婦、病者などの健康の保持・回復といった特別用途に表示される食品です。
「JHFAマーク」は、「公益財団法人 日本健康・栄養食品協会」が承認した食品につけられます。ただし、品質の保証であり、効果の保証ではありません。
「サプリメント」「栄養補助食品」「健康補助食品」などの表示がされている食品は、「一般食品」に含まれます。機能性の表示は許可されていません。
「健康食品」には膨大な種類や数があるため、どの商品を購入しようか迷うこともあるのではないでしょうか。とはいえ、メディアの広告やSNSの流行りに影響されて商品選びをすると、栄養の偏りや過剰摂取の原因となる場合もあります。
正確な情報の調べ方や注意点を知って、自分に合った商品を選びましょう。
日常生活において「健康食品」の情報は、テレビCMやネット広告などを通して目にすることが多いのではないでしょうか。しかし、商品広告では、健康食品のよい面を強調し、副作用や科学的評価など、販売側に都合の悪い面は伝えない傾向があります。
国の制度として「保健機能食品」が設定されているものの、適切な表記がされていない場合も少なくありません。例えば、「栄養機能食品」の対象成分に該当しない植物エキスなどを全面にアピールして、「保健機能食品」として売り出している商品があります。
また、商品のキャッチコピーなどで使用されているフレーズが誇大広告にあたることもあります。
【誇大広告にあたる謳い文句の例】
・「コロナウイルス対策」「ウイルス抑制」「免疫力向上」に効果があるとする表示
・「即効性」「万能」「最高の効果」
・「飲むだけで痩せる」「バストアップに効く」
・「ガンが治った」など、治療や治癒についての言及
・「厚生労働省承認済み」「厚生労働省許可」
など
上記のような文言が入っている場合は、注意が必要です。広告の宣伝文句に踊らされず、パッケージの表示をしっかりと確認しましょう。
健康食品に含まれる素材が、本当に安全で健康の維持・増進に有効なのか、不安になることもあるのではないでしょうか?正確な情報を得るには「国立健康・栄養研究所」のホームページを見るのがおすすめです。
「国立健康・栄養研究所」のホームページ「健康食品の安全性・有効性情報」(https://hfnet.nibiohn.go.jp/)は、健康食品の安全性や有効性についての情報源として高い信頼性があります。サイト内の「素材情報データベース」から、科学的根拠にもとづいた情報を素材別に調べられます。
健康食品に使われている素材の安全性や有効性が気になった場合は、上記のサイトからチェックしてみましょう。
「健康食品」が健康の維持や増進に役立つとはいえ、「健康食品」を摂ってさえいれば健康になれるわけではありません。健康な身体づくりの基本は、健全な食生活・適度の休養・適度な運動のバランスです。
まずは、主食・主菜・副菜など、複数の食品から必要な栄養素を摂取することを心がけましょう。それでも栄養が偏ってしまいがちなときは、「健康食品」を取り入れることもひとつの手です。
人によって補うべき栄養素は異なるので、広告の宣伝文句や流行りに流されないように気をつけてください。自分に合った商品選びのためにも、「健康食品」の種類や言葉の意味を知っておくことは重要です。
今後、健康増進を目的に「健康食品」を選ぶときは、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」などの表示と該当成分を確認しましょう。
最近では、「ネスレ ミロ」や「養命酒」のように、SNSで身体にいいと話題になり、人気に火がつくことも多いです。一過性の食品ブームに振り回されるのはよくないですが、健康や栄養バランスについて考えるいい機会になります。普段の食事で、鉄分やビタミンDが不足気味の方は、適度な量を守って「ミロ活」をしてみてはいかがでしょうか?