2020年12月19日、ついに等身大の「動くガンダム」がお披露目!原作タイトルを借りれば「ガンダム山下ふ頭に立つ!!」といったところですが、本当に実現するとは驚きですよね。
18mのロボットを動かすのは簡単なことではありません。今までやろうとした人もいない、まさに「夢」のようなチャレンジです。
しかし、日本の技術はその夢を現実へ引きずり下ろしました。
それを実現したのが、9社のテクニカルパートナーたち。設計・施工を担当した「株式会社乃村工藝社」や制御システムを担当した「アスラテック株式会社」をはじめ、日本を代表する技術メーカー集います。
つまり、動くガンダムは日本のものづくり技術の結晶。この記事では、ガンダムが動いた裏にある、テクニカルパートナーたちの技術を紹介します。
まず言っておきますと、ガンダムを動かしたことは「かなりすごいこと」です。
まず、18mのロボットを動かす試みが「世界初」です。今までやろうとした人がいませんでしたし、多くの人たちが実現不可能だと思い込んでいたのです。
ロボット作りにおいて、大きいことは障害となります。
大きいことは重いということ。重いと動かすパワーが必要になりますし、自重を支える問題も出てきます。そして、対応して素材を軽くすれば、今度は強度不足もちらつきます。
例えば、ドローンとヘリコプターを想像してください。
ドローンは本体が小さく軽いため素材はプラスチック、動力はモータで十分です。しかし、大きく重いヘリコプターは金属製で、動力はガソリンエンジンが必要になります。
これを人型で考えると、HONDAの「ASIMO」をそのまま巨大化すればガンダムになるのか?という話になります。おそらくそれは無理で、18mというサイズに合わせた再設計が必要になるでしょう。
つまり、ガンダムを動かすことは人間サイズの延長線ではなく、「18mのロボットを動かす」という、まったく未知の試みだったのです。
ガンダムのもとに人々が集まる理由。それはひとえにガンダムが好きだからではないでしょうか。
ガンダムという作品は、リアルロボットアニメの出発点といえる作品です。1979年の放送当時、スーパーロボット主体だったロボットアニメ界に新たな風を入れ、多くの子供たちを作品の虜にしました。中にはガンダムを作りたいと考えた子もいたでしょう。
その一人が、テクニカルディレクターの石井啓範氏。ガンダムを作りたくてエンジニアになった方で、双椀重機「アスタコ」の生みの親です。
今回集まった方々は、元・ガンダムに魅了された子供たち。本プロジェクトは、彼らの夢を実現する場でもあるのです。
幼いころに夢を見せてくれたガンダムを現実にし、今の子供たちに新たな夢を見せたい。これこそが、人々がガンダムのもとに集まる理由ではないでしょうか。
本プロジェクトは、サンライズ代表取締役の宮河恭夫氏を中心に、各分野の技術を提供する「テクニカルパートナー」たちから形成されています。
集まったテクニカルパートナーは全部で9社。専門分野の異なる企業たちが、夢実現のために集まっています。
今回はガンダム本体の製造に関わった企業から3社をピックアップして紹介したいと思います。
本体デザイン及び制作、そして演出。ガンダムの印象を決める、非常に重要なポジションを担当したのが「株式会社乃村工藝社(以下、乃村工藝社)」です。
乃村工藝社は、お台場に展示された、2体の実物大ガンダム立像を施工した企業です。
2009年のガンダムでは18mを立たせることに成功し、2017年のユニコーンガンダムでは一部を駆動させることに成功。多くの人たちに驚きと感動を与えました。
普段は、イベントや展示施設などを計画から施工まで一貫して手掛けています。
実績は東京モーターショーのトヨタブースや、東京駅八重洲北口コンコース・専門店街「東京ギフトパレット」など数えきれないほど。
2体のガンダムと無数の実績。それらで培った技術の集大成が、今回の動くガンダム。本プロジェクトは、特別な実績を持つ乃村工藝社だからこそ実現できたのです。
ガンダムを動かすためのプログラムを担当したのが「アスラテック株式会社(以下、アスラテック)」。ガンダムが腕を上げたり、歩いたり、首を回したりできるのは、アスラテックのプログラムがあるからなんです。
今回、動作信号の伝達に使われたケーブルはなんと900本!最長で50m物もあるという規格外の内容です。
そして、そこへ正しい指令を送るのがアスラテック制のプログラム。ドールサイズから4m物のロボットまでを自由自在に動かせる「V-Sido(ブシドー)」というプログラムが使われています。
V-Sido最大のポイントは操作が非常に簡単なことです。実物大のガンダムのコントローラーはなんとタッチパネル!誰でも簡単に操作ができるんです。
技術の粋を誰でも簡単に動かせる。これが可能なのは、アスラテックが本当の意味で高い技術を持っているからにほかなりません。
実物大ガンダムの中で一番精密な動きをするのが「手」です。指の1本1本が関節単位で稼働し、本物の人間と同じような動きが可能です。
これを実現したのが、徹底した軽量化。通常このサイズだと600kg以上になるところを、200kg以下で制作したのです。
その設計を担当したのが「株式会社ココロ(以下、ココロ)」。人型ロボットや恐竜型ロボットなどをリアルに動作させるプロフェッショナルです。
そして、じつはあの「キティちゃんのポップコーン販売機」を作っているメーカーでもあります!キティちゃんはガンダム40周年記念としてガンダムとコラボ企画を行っていましたが、まさかこんなところでも接点があるとは驚きですね。
名だたる企業たちの協力を得て動いた実物大ガンダム。その姿は、人々の心に感動を与え、未来の訪れを感じさせるのではないでしょうか。
そこで、ガンダムを本気で動かそうと考えた、2人の言葉を紹介します。
このプロジェクトが発足した当時、ガンダムを動かす意味について、『機動戦士ガンダム』総監督の富野由悠季氏は「あらゆる意味でのマイルストーンになる」と語っていました。
それと同時に「夢というものを次世代に伝えていく必要がある」とも。
今やガンダムを作ることはは、技術者たちにとって一つの夢であり、目標になっています。
そのガンダムが実際に立って動いた。これのこと自体に意味があり、そして夢へ歩む原動力となるのではないでしょうか。
コメント原文はこちら(ガンダム GLOBAL CHALLENGE)
この言葉は、プロジェクトを技術監修した、早稲田大学副総長の橋本周司氏によるもの。
夢は努力で現実になる。夢に対して「解」があると分かれば、新しい夢を見る土台となるというのです。
確かに今まで人類は、常に夢を追いかけてきました。
飛行機を飛ばしたライト兄弟や月へ行ったアポロ計画を始め、人類は夢を追いかけ実現することで、新しい時代へと進んでいるのです。
つまり、ガンダムを動かすことは、人類が新しい夢を見るためのステップ。かなえた夢がさらなる夢を見せてくれる、未来への階段なのです。
コメント原文はこちら(ガンダム GLOBAL CHALLENGE)
40周年でついに動いたガンダム。
オープニングセレモニーでは、富野氏が「お子様方には、ごめんなさいと申し上げます。2本足歩行のできる実物大のガンダムを作れなかったからです」とコメントするも、50周年には実物大のザクを作りたい意欲もあらわにしていました。
2009年に実物大のガンダムができてから11年。たった11年でガンダムはここまで進歩したのですから、50周年には本当に2足歩行できるザクができるかもしれませんね。
技術の革新には夢が不可欠。動くガンダムは、私たちに夢を見る大切さを教えてくれたのです。