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『サクラ革命』なぜサービス終了を回避できなかった?サ終に向かうゲームの共通点とは

突然サービス終了が告知された『サクラ革命』。サクラ大戦というビッグタイトルと、高額な開発費を投入していただけに、驚きの声が多く上がっています。

また、SNS上のコメントを見てみると、好きな作品を使い捨てられたという気持ちを持つユーザーが多いことが分かりました。確かに『サクラ革命』の内容を見ていくと、ゲームクオリティや運営に不安点が多くあったことは確かです。

しかし、本当にサービスを終了しないといけない状況だったのでしょうか?

『サクラ革命』のサービス終了は、仕方ないものだったのか、それともなるべくしてなったことなのか、その背景をサービス終了を迎えるゲームの共通点から解説します。

4月22日・突然のサービス終了告知|早すぎる決断にひどいとの声も

出典:『サクラ革命』公式サイト / Original Game © SEGA / © DELiGHTWORKS

2020年12月15日、大人気シリーズ『サクラ大戦』を題材にしたソーシャルゲームとしてリリースされた『サクラ革命』。SNS上で不安な声が目立つことはあったものの、新たな『サクラ大戦』として固定ファンも定着していました。

しかし、4月22日に突然「サービス終了」のお知らせが。

リリースから198日。あまりにも早いサービス終了に驚きの声が多く上がりました。

https://twitter.com/yPAm17awjFcp6hG/status/1385149902099927042

これに伴い、事前登録者数達成報酬として予定されていた、Vtuberとのコラボ企画も実装されないことに。ユーザーや関係者を置いてけぼりにしたサービス終了対応に「ひどい」との声も見られました。

『サクラ大戦』という多くのファンを擁した作品だっただけに反発も大きく、作品を使い捨てされたという印象を抱いたユーザーも多かったようです。

リリースからサービス終了までの流れ

『サクラ革命』はなぜこれほど早くサービス終了することになったのでしょう。その原因は、圧倒的に足りない売上にありました。

『サクラ革命』の開発費は30億円超えと言われていますが、リリース直後からセールスランキングが200位以下と振わず、以降も改善が見られないことからサービス終了に踏み切ったのだと考えられます。

リリースされた2020年12月から、サービス終了が決まった4月22日までに何があったのか。時系列に沿って説明したいと思います。

リリース直後|原作との差や振わないセルランに不安の声

2020年12月15日、『サクラ革命』リリース。『サクラ大戦』の続編という話題性もあり大いににぎわいました。

概ね順調な滑り出しに見えましたが、思ったよりセールスランキングは伸びず。初動は100~200位に収まる結果となり、不安をあおる形となってしまいました。

また、作品の舞台が2011年と、それまでの作品との連続性が無かった点も疑問視されていました。『サクラ大戦』のキャラクターたちも登場せず、霊子甲冑のデザインも大幅に変更したことで、別作品のイメージを持つユーザーも多かったようです。

1月~3月|虚無期間や『ウマ娘』との比較も

2021年1月、セールスランキングは改善されず、400~200位あたりを上下することとなります。

また、2月中盤からはイベントや新章の追加が無い、通称「虚無期間」に突入することとなります。このあたりから、リリース直後にも関わらず追加要素が少ないことに不安を覚えるユーザーが増えてきました。

3月10日、虚無期間が終わり、待望のイベント「桜花爛漫! 天神花見十番勝負」が開催されます。

しかしそのころ、ソシャゲユーザーたちは2月24日にリリースされた『ウマ娘』に流れており、『ウマ娘』と『サクラ革命』と比較するツイートも散見されるように。

もちろん、両ゲームに違う良さがあるのですが、リリース日が近かったことや開発期間が同じくらいだったことから比較せずにはいられなかったようです。

4月|新エピソード追加!からのサービス終了

4月21日、ユーザー待望のメインストーリー4章追加が発表されます。メインストーリーは評判が良かったため、ここから面白くなっていくのではと、巻き返しに期待が寄せられます。

しかし、翌4月22日、突然のサービス終了告知。

4章追加と同日というタイミングに驚きの声が上がり、さらには公式ラインサービスが突然終了したことから、「さっさと店をたたみ始めた」という印象を受けるユーザーは少なくなかったようです。

『サクラ革命』はなぜ存続できなかったのか

いくつかの課題があったとはいえ、なぜ早期にサービス終了してしまったのでしょうか?
それはソーシャルゲームの収益構造に理由があると考えられます。

ソーシャルゲームの支出・収益は一般的に次のようになっています。

  • 支出:開発費+運営費
  • 収益:ガチャをはじめとする課金要素、グッズ、アニメなど 

『サクラ革命』の開発費は30億円以上といわれています。ここに毎月の運営費を加えると安定した高額収益が無いと継続は難しいと考えられます。

しかし、セールスランキング推移は100~400位付近。開発費の回収どころか、運営費も赤字になる可能性があったのかもしれません。

ここでは、『サクラ革命』が存続できなかった理由を3つ考察してみたいと思います。

原作『サクラ大戦』の良さを活かしきれなかった

出典:『サクラ大戦.com』 / ©SEGA

根本的な問題として『サクラ大戦』のソーシャルゲームにもかかわらず、「過去作のキャラが登場しない」、「霊子甲冑のデザインが違う」という2点がありました。

多くの原作付きゲームは、原作の人気キャラクターがゲーム人気をけん引しています。超人気キャラが実装されると軽く「祭り状態」になるほどです。

『サクラ革命』が「別のサクラ大戦」として認められればこの問題は解消したかもしれません。しかし、ファンたちにとってまったく新しい環境は受け入れにくいものです。

例を挙げると、プレイステーション2用ゲーム『ポポロクロイス はじまりの冒険』というゲームがそうでした。世代交代に伴ってキャラクターを総入れ替えした結果、ユーザー離れを起こしてしまいました。やはりファンは追いかけてきたキャラクターたちの活躍を見たいのです。

3Dグラフィックのクオリティ不足

出典:『サクラ革命』公式サイト / Original Game © SEGA / © DELiGHTWORKS

3Dグラフィックのクオリティもユーザーの不満が多く見られるポイントでした。イラストと3Dの差を感じるユーザーも多かったようです。

この不満は『ウマ娘』のリリースと共に顕著になりました。『ウマ娘』の3Dモデリングレベルが高かったため、比較されることが増えてしまったのです。

ゲームの良さはグラフィッククオリティばかりではありませんが、ソーシャルゲーム全体のクオリティアップに伴って、求められるクオリティも高くなっているようです。

追加要素が少なすぎた

リリース直後とは、いろいろな新要素の追加を期待する時期だと思います。広がっていくゲーム世界を楽しみ、愛着を持つことで定着していくユーザーも多いと思います。

しかし、2月からの「虚無期間」から見ても分かりますが、新要素の追加スパンはかなり長いものでした。これにより、既存コンテンツをクリアし終えたユーザーたちの離脱を招く結果となったと考えられます。

メインシナリオに期待する声は多かった

複数の課題を抱えていた一方で、メインシナリオを支持する声もかなりありました。
特に4月22日に追加された4章の展開を評価するユーザーは多く、メインストーリーを最後まで見届けられないことを残念がる声も見られました。

https://twitter.com/WmEV1SN8FUZm6ey/status/1385880197614895107

ソーシャルゲームのシナリオは、中盤以降に盛り上がってくることが多いのが特徴です。『FateGrandOrder』もそうですが、キャラが増えてきて、ストーリーの核心が見えてくると一気に盛り上がりが増します。

今後期待できるシナリオだっただけに、残念なポイントです。

ソーシャルゲームが「サ終」に向かう3つの特徴

あまり知られていませんが、毎年多くのソーシャルゲームが「サ終(サービス終了)」を迎えています。

1年未満、200日未満で終了するゲームも多数あり、ソーシャルゲームの競合性が高くなっていることを実感させられます。

そんなサ終したゲームには、『サクラ革命』にも見られた、共通する特徴がいくつかあります。ここでは、『サクラ革命』の問題点から、サ終に向かうゲームの共通点を見ていきましょう。

リリース直後のスタートダッシュに失敗する

ビッグタイトルほど命取りになるポイントです。

スタートダッシュはゲーム全体の印象を決めるポイントのため、ここで失敗すると行先に不穏な空気が流れてしまいます。

また原作付きのゲームにおいては、コンテンツに見合ったクオリティが提供されないとユーザーががっかりしてしまいます。それどころか、好きなコンテンツを扱っているのに、大事に扱ってくれていないという悪い印象すら受けるでしょう。

一度付いた評価を覆すのはかなり難しく、いつまでも「コケたゲーム」という印象が付きまといます。『サクラ革命』も、課題だった3DモデリングやUIの改修が行われていましたが巻き返しはできなかったようです。

追加コンテンツが少ない・頻繁に追加できない

コンテンツ不足はソーシャルゲームにとって致命的です。

ソーシャルゲームはコンテンツを追加し続けることでユーザーを楽しませる構造になっているため、コンテンツ追加が無いと本当にやることが無いのです。

ソーシャルゲームのコンテンツは、メインシナリオ+イベントシナリオで成り立っているのが一般的です。メインシナリオを長期スパンで追加しながら、イベントシナリオで世界観に拡張性を持たせるという構図です。

ここで重要なのがイベントの追加頻度です。メインシナリオをクリアしてしまった人が離脱しないように、つなぎとめる効果があるためです。

『サクラ革命』はリリース直後からコンテンツの追加が少なく、2か月後には虚無期間が発生してしまいました。この間にほかのゲームへ移ったユーザーも多いのではないでしょうか。

ゲーム性に関する課題が解決できない

これは根本的な問題ですが、ゲームの根幹となっている「ゲームスタイル」や「グラフィック」などが評価されず、課題となっているパターンです。

これを解決するには大幅な改修コストが必要となる上、改修結果によってはユーザー離れを助長することにも繋がります。

しかし、この課題がある場合、コンテンツを追加しても根本的な状況改善はできないため、ゲームを存続するにはなんとかして解決する必要があります。

解決した例を挙げると、リズムゲームのシステムを総入れ替えした『Tokyo 7th シスターズ』というアイドルリズムゲームがあります。当初は、昔の『初音ミク Project DIVA』に近いシステムだったのですが、よりやり込み要素の強い『beatmania』シリーズに近いシステムになりました。結果、『Tokyo 7th シスターズ』は2021年現在も存続しています。

『サクラ革命』では、全体的なグラフィックやUIが課題と言われていたため、思い切った改修を行っていれば、存続の可能性もあったかもしれません。

ソシャゲはファンたちが交流し合える「場」であってほしい

出典:『サクラ革命』公式サイト / Original Game © SEGA / © DELiGHTWORKS

いろいろと課題点があった『サクラ革命』ですが、それでも楽しんでいたユーザーは多くいました。今までの『サクラ大戦』とは違えど、血を引き継いだ作品として愛そうとするユーザーはいたのです。

原作付きのソーシャルゲームを単なるゲームではなく、コンテンツが続いていく「場」として考える人も少なくありません。

ゲームを楽しむのと同じくらい、コンテンツを楽しみ続けたいと思う気持ちや、ファン同士で交流したいという気持ちがあるのです。

しかし、そんな気持ちに反して突然のサービス終了。ファンたちが「見捨てられた」「原作を使い捨てられた」という気持ちになるのも仕方ないと思います。

ソーシャルゲームも一つの収益モデルですが、コンテンツを扱うにはファンたちの愛を忘れてはいけません。

コンテンツを愛し、ファンと一緒に「場」を作っていこうという気持ち。それこそがソーシャルゲームに最も必要とされることなのではないでしょうか。

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