「AIが世界を変える」との声は2020年特に響いていますが、実際の所まだ実感がわかない人は多いかもしれません。
依然レジには人が立っていますし、バスの運転手さんは失業していませんし、多くの人は毎日働いています。
しかし、AIが人の代替をするという点では、あらゆる分野で着実に近づいてきているのです。
いくつか事例をとりあげたいと思います。
なお今回AIと銘打っていますが、機械学習やディープラーニングを内包した広義の意味でのAIとして記述します。
歌声合成ソフト
コンピュータに歌わせるソフトですと、「初音ミク」が有名ですが、
今までの音声合成ソフトは、そのまま音符と歌詞を入力するだけではとても聞くに耐えるものではありませんでした。
音符と歌詞以外にも、抑揚や息継ぎ、微妙な音程等を細かく調整していき、それでも人間と間違える…というほどではありませんでした。
しかし先日発表になった「歌声合成ソフト【NEUTRINO】」は、DTM業界に衝撃をもたらしました。
ニューラルネットワークを用いたシンセサイザーで、発生タイミング・音の高さ・声質・声のカスレ具合等、全て自動で行ってくれるのです。
適当に打ち込んでみたけど、完全なベタ打ちでもそれなりに聞けるの凄いと思う#AIきりたん pic.twitter.com/SoUIz3JZqv
— 神前 暁 / こうさき さとる (本名) (@MONACA_kosaki) February 24, 2020
音符と歌詞しか指定していないにもかかわらずこの自然さです。
これまで数多の音楽家が必死に時間を掛けて、あらゆるパラメーターを調整してきた結果を飛び越えてきました。
しかもこのソフト、フリーウェアです。
(作った楽曲に関しては規約があります)
プロの作曲家もかなり驚いている様子ですので、今後仮歌等の場面で使われるケースが出てくるでしょう。
記事制作
記事については、すでにAIが作った文章を目にしているかもしれません。
例えば日経新聞のこの記事
MCUBS MidCity投資法人の19年12月期、1口当たり分配金28.9%減1955円
これは決算短信を出した数分後には、AIが生成して作成した記事です。
所感を記入する記事でもないので、人間が書く必要はありませんし、なにより人間には対応不可能なスピードで公開することができます。
またウィキペディア等でも、記事の品質向上のためにAIが使われています。ウィキペディアは一日に膨大な量が更新されますが、文脈に齟齬がないかチェックするのはAIのほうが早いのです。
更に、古い情報のままアップデートされないウィキの記事についても、AIで更新ができないか、開発が進んでいます。
動画制作
例えばニュース動画、
先程と同じく日経新聞では、AIでニュースを短くし、AIで読み上げ、AIでニュースを動画化しています。
またニュース動画以外でも、普通の動画編集でAIは活用されています。
「動画のセンスは人間が必要なのでは?」と思うかもしれませんが、単純にカットを見せるだけなら、すでにAIで問題なくできます。
▲素材とテキストを入れると自動でAIが編集するサービス、で作られた動画
代替しようと思えば、すでに色々できる
裏側ではもっといろいろなものにAIが使われています。
例えば商品の発注時、需要をAIで予測したり、裁判時の翻訳で使用が検討されていたり、
新人教育で効率的な学習方法を確立したり、カスタマーサービスで客への返答を検討したり。
すでにAIは実用段階へ入っており、あとは「いかに使うか」が試されている時期です。
例えばホームページにチャットボットを搭載するかどうか、検討するとしましょう。
顧客対応の時間や人件費を削減することができるかもしれませんが、もし精度が悪い場合「対応が悪い」とお客に勘違いさせるかもしれません。
そのために、どう精度を挙げていくか、いつ・どこまでを人が対応するべきか、そういった”決まりごと”を考える必要があります。
しかしその”決まりごと”を考えるのが面倒くさいから、と導入を先延ばしにしていては、ライバルから出遅れてしまうこともありえるのです。
AIが全てを解決してくれる未来のためには、人間がAIに対応する必要がある、ということですね。