2020年、可処分時間の取り合いが加速する

・2019年に起きた変化

2019年、ITや生活に大きな変化がありました。

その中で特に際立ったのは「生活の質」を上げるサービスが、売上を伸ばしていることです。

例えば以下のようなニュースがありました。

Netflixの有料会員数が全世界1億5,100万人突破

(2019年7月)

月額見放題のサブスクリプション型映像配信サービスNetflix。月1000円近いサービスなのですが、すでに日本の人口よりも多い会員数を獲得しています。

「予想よりも小幅な上昇」「アメリカのユーザー数が微減」等、ネガティブな声も聞かれますが、今後の情勢には問題ないと思います。

ユーザー層をみると、もちろん主力は若い世代なのですが、50代~60代も他のサービスに比べると加入率は高いです。

キャシュレス決済、想定上回るペースで拡大

(2019年1月)

昨年12月、paypayが行った20%ポイント還元キャンペーンは、キャッシュレスの認知度を大きく広げました。

そして消費税増税に伴い、政府が銘打った「キャッシュレス・消費者還元事業」により、現在卸・小売・サービス業の4割が参加しているとのことです。

政府は2025年に40%を目指すということですが、個人的には問題なく達成できると思います。単純に、ネット社会で現金を使うのは面倒だからです。

UberEats4周年 流通総額は80億ドル(8700億円)に

利用したことのない方へ簡単に説明すると、UberEatsとは、アプリで注文できる食事のデリバリーサービスです。今までのピザの配達等と違うのは、配達するのが飲食店のドライバーではなく、Uberに登録したドライバーという点でしょうか。

日本でのフードデリバリーは、これまでピザや寿司等が主流で、一人で頼むには贅沢なもの…という印象がありましたが、UberEatsにより一般飲食店のメニューを低コストでデリバリーしてもらえるようになりました。

apple watch、ipod全盛期の売上を超える

スマートウォッチは、一時期待はずれとみられていましたが、最近また売上が伸び始めています。(詳しくはこちらをご覧ください)

これにはフィットネス市場の盛り上がりが関係しています。2018年国内のフィットネスクラブ市場は4,800億円を記録し、過去最高となっています。

IoTの普及を考えると、ウェアラブルデバイスはまだまだ伸びる余地があります。これも期待できる要素です。

・可処分所得の奪い合いから、可処分時間の奪い合いへ

上記に載せたニュースは、すべて2019年に躍進を遂げたものになりますが、先程も行ったとおり全て「生活の質」を上げるサービスばかりです。

Netflixは家にいる時間を快適にしました。もうDVDを借りに行く必要はなく、自宅で更に高画質なものを楽しむことができます。場合によっては、映画館をやめてNetflixを選ぶ人もいるかもしれません。

キャッシュレス決済は、これまで現金主義だった人の、ATMに並ぶ時間、レジに並ぶ時間を短縮しました。また各種ネットサービスの支払いも、キャッシュレスアプリで素早くできるようになっています。

UberEatsは、家庭でも飲食店の味を楽しむことができるようにしました。作るのが面倒なときでも、ピザじゃなく栄養豊富な食事を楽しめます。ちなみにUberEatsで食事をしながら、Netflix等で映画を見る提案を同社はネットCMでやっています。

Apple Watchは、スポーツを楽しむ人、運動する人に大きな人気を得ています。

最高の毎日を過ごすため、後どのぐらい運動すればいいのか、今のコンディションは良い状態なのか、Apple Watchが管理してくれます。

これらは、皆時価総額、数兆円以上の企業が行っていることです。

もはや消費者へいかに物を売りつけるかではなく、いかに時間を使ってもらうか、という競争に世界はシフトしています。

2020年、時間の奪い合いは更に加速する

もうあと数日で2020年が来るわけですが、”時間の奪い合い”は間違いなく、今後加速していくことでしょう。

まず2020年春には、5Gサービスがスタートします。

4Kや8K等の高画質コンテンツは広まっていくでしょうし、これまで通信制限で動画閲覧を渋っていた人も、今後は積極的に閲覧するようになります。

ウェブサイトやネット広告等も、これまではいかに軽くするかへ重点を置いていましたが、今後はいかに注目を引くか、いかに楽しんでもらうかを企業は重視します。

まだ明確な形は想像できませんが、正直コミュニケーションの形も変わっていくのではないか、と思っています。そのぐらい「時間の過ごし方」に大きな影響を与えるでしょう。

5Gは既存の端末が早くなるだけではなく、IoTも加速させます。

一番わかりやすいのは自動運転です。自動運転自体は、現状のテスラ等でも可能ですが、より速やかな自動運転のためには、各車・各道路の状況をリアルタイムに受信し、3Dマップとして処理することが求められます。また、運転の精度を上げていくためには、運用データを集める必要がありますが、これも5Gが全て解決してくれます。

自動運転車が普及し始めた場合、これまで運転に費やしてきた時間をどのように過ごしてもらうか、ここでも可処分時間の奪い合いが起きるでしょう。

ちなみに都心では、今すでにタクシーサイネージの広告枠がかなり人気とのことです。これも奪い合いです。

日常を過ごすのに健康は重要です。特に日本では、「大人の10人に8人は40代以上」となるので、ヘルスケア事業はかなり注目されるでしょう。

更に2020年は東京オリンピックの年です。スポーツにも多くの注目が集まります。スポーツや運動も時間の過ごし方の一つです。ここでも可処分時間の奪い合いが起きます。

どうでしょうか。可処分時間の奪い合いが、2020年以降激化すると思いませんか?

マーケティング担当者が一番意識すべきこと

例えば物を売りたい場合、これまではいかにお得で高機能か、をアピールしていたかもしれませんが、今後は「顧客の時間をショッピングに割いてもらう」という意識をしなければいけません。

「オンラインで購入できる」ことはもちろん、「AmazonPay等を用いて数クリックで決済ができる」「自分にあったものがすぐわかる」「毎月自動で厳選したものが送られてくる」等、時短の工夫が必要になります。

そして、「その商品を購入した場合、どのように生活の質が向上するか」という点を強くアピールする必要があります。

少なくとも商品ページでは、それをつかった情景が思い浮かぶようにしましょう。

更に意識する点として、可処分時間の奪い合いでは、AIDMA型ではなく、SIPS型での訴求力が求められます。

(AIDMA・SIPSについてはこちらのページでまとめています)

参加型のキャンペーンや、ストーリーのあるプロモーションを行うのは効果的です。

実際大手のブランドは、シェアしてもらえるようなプロモーションを数多く打っています。

今後この傾向はますます激しくなるでしょう。

世界はいい方向に進んでいる?

AIの進化やシンギュラリティが話題になっていますが、正直「AIに仕事が奪われる」といった心配は杞憂だと思っています。

AIが人の代わりに面倒な仕事をしてくれるなら、人間はいかに生活の質を改善できるか、諸問題を解決できるかに注力すればいいだけだからです。

そうなれば、SDGs(世界を変えるための17の目標)達成も近いのではないでしょうか。

2019年その1歩を踏み出したのだと思っています。

来たるべき2020年、加速する道筋は見えています。

どれだけ素敵な年になるのか、わくわくしながら年を越したいと思います。

Published by
安藤隆史