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withコロナ下の組織運営とリーダーシップ(VUCA時代の戦略)

企業や個人を取り巻く環境が複雑で不確実になりました。将来の予測がほぼ不可能になり、競争環境は一変しました。ダボス会議ではこのような状況を指して、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字を取った造語、「VUCAワールド」と呼ぶようになりました。

世界がVUCAワールドとなったこのVUCA時代では、2つの大きな変化があります。それは、1)AIを中心としたオートメーション化の加速、2)競争優位性の質の変化、です。これらの変化は一体何を引き起こし、その結果企業はどのような戦略やリーダーシップ、能力が求められるのでしょうか。

1.VUCA時代の大きな変化

1-1.  AIを中心としたオートメーション化の加速

まずAIを中心としたオートメーション化の加速によってコスト構造が激変、企業間の業績に決定的な差が開きます。具体的にはオートメーション化に適応できなかった企業は淘汰されていくと考えられています。

AIの得意な領域は1)PDCAサイクルに基づく学習が有効な領域、2)ある程度手順が決まっている領域、です。前者は主に新薬の開発や多くの試験作成業務等です。後者はホワイトカラーの業務です。これらがAIに置き換わることで人件費、採用・育成コスト、マネジメントコストが低下し、同時に生産性が向上するため急速に収益性が向上します。

このようにオートメーション化を成功させた企業は、低コストで高品質なモノを高速で市場投入できるようになる可能性があるということです。

1-2.  競争優位性の質の変化

将来が予測できない環境下では、これまでのような持続的な競争優位性の構築は極めて困難になります。思ってもみない代替品が業界を急速に破壊したり、新たな技術革新によって技術が陳腐化したりすることによって、市場のニーズが絶えず変化するためです。

よって組織として試行錯誤、学習しながら環境変化に適応していくこと、すなわち一時的な競争優位性を連続して構築することが求められます。

2.オートメーション化への適合

オートメーション化の加速に適合するために必要なことは、1)ITリテラシーの向上、2)業務の明確化、3)コアコンピタンスの再発見、です。業務の明確化は、そのプロセスの中で捨てる業務や外製化する業務も明らかになります。(図参照)

3.一時的な競争優位の構築

アイゼンハートが主張するシンプル・ルール戦略が一時的な競争優位性の構築と非常に相性が良いと言えます。シンプル・ルールの要諦は「少数のシンプルなルールだけを組織に徹底させ、後は状況に合わせて柔軟に意思決定することでダイナミックケイパビリティを発揮させる」というものです。ちなみにダイナミックケイパビリティとは「変化する事業環境の中で社内外のリソースを絶えず組み合わせ直し続けるような、企業に埋め込まれた慣習や繰り返しの行動プロセス」と定義されています。

ようするに、「最低限のルールで運営される十分に権限移譲された組織が、不確実な事業環境に適応する行動プロセスや慣習を獲得する」ということをシンプル・ルール戦略は述べています。そしてシンプル・ルール戦略の実現には1)事業機会・危機を察知する能力、2)そこに対し投資する勇気、3)明確なビジョンが必要であると考えられています。

ただし実は経営学者の間でもコンセンサスは取れておらず、まだ経営理論として確立していないことに注意して下さい。

4.現場レベルで意思決定し実行する

将来の予測が困難であるため、常にトップが正しい判断を行えるとは限りません。それどころか、顧客との接点を持ち、市場や競合の変化を肌で感じている現場の方が正しい意思決定が迅速に出来る場面が増えてきました。そのためVUCA時代に求められるのは現場レベルで柔軟な意思決定とそれを実行する体制です。

このような状況下ではトップダウンによるリーダーシップではなく権限移譲とエンパワーメントによるボトムアップ型のリーダーシップスタイルが求められます。条件適合理論に基づいた4つのリーダーシップスタイルのうち、指示・命令型以外のリーダーシップスタイルがそれに該当します。ス仕事の難易度や部下の成熟度に応じてリーダーは自身のリーダーシップスタイルを選んで演じなければなりません。

≪リーダーシップスタイル≫

指示・命令型:作業内容を細かく命令するスタイル

参加・指導型:作業方法を一緒に考え、部下の考えを尊重するスタイル

支援・説得型:進め方は任せ、必要な時にサポートを行うスタイル

委任・達成型:仕事内容、進め方は任せ、責任だけ負うスタイル

このような権限移譲とエンパワーメントによるリーダーシップの発揮は既存の組織の枠組みの中で有効に機能します。代表的な例は京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が編み出した「アメーバ経営」でしょう。アメーバ経営とは採算部門の組織を10人以下の少数チーム(ユニット)で細分化し、それぞれが独立採算で運営される組織を運営する経営です。アメーバは小規模かつ独立採算なので、マーケットの変化に対してリアルタイムに意思決定し対応できる強みを持ちます。

一方で近年、新たな組織構造の存在も発見されました。それが「ティール組織」です。この組織はメンバー全員誰もが強い権限を持つため、そもそも権限移譲もマネジメントも必要ありません。環境変化に応じて一人一人が動き、それが結果として一つの生命体のように組織が動いていきます。こういった新しい形態の組織も、VUCA時代の産物かもしれません。詳しくは著書『ティール組織』を是非読んでみてください。

5.実行した経験を知に転換する組織学習の仕組みを作る

ここまで戦略とリーダーシップに関して述べてきましたが、学習する仕組みも極めて重要です。毎回0から試行錯誤するよりも、前回の結果を受けて正解っぽい方向へ高速で多発改善していく方が高効率と言えます。

カーネギーメロン大学のアルゴーディによると、組織学習は1)組織・人の知に基づいた実行、2)実行による経験、3)経験による知の獲得、という循環プロセスを取るとのことです。この循環プロセスを説明するために、SECIモデルについて解説します。SECIモデルとは一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の野中郁次郎教授が提唱した組織のナレッジ・マネジメントの仕組みです。SECIモデルは下記の図のような流れで知識を創造すると述べています。

まず共同化とは、個人の持つ暗黙知を共感と経験の共有によって他社に暗黙知として移転させることです。職人さんの「背中を見ろ」がこれにあたります。

次に表出化はこの共有した暗黙知を組織内の対話や思索を通じて言語化、図式化して形式知に変換することです。○○業界のユニクロになる、といったようなメタファーやたとえ話がこれにあたります。

連結化は表出化で言語化、図式化した形式知同士を組み合わせたり再配置したりすることで新しい形式知(理論や物語)を生み出すことです。マニュアルの作成やビジョンの言語化がこれにあたります。

最後に内面化とは連結化された形式知を実践することで個人、組織のノウハウとして体得し暗黙知化していくことです。業務の反復によって習熟し、組織の文化として醸成されていくことがこれにあたります。

このように、1)共同化、2)表出化、3)連結化、4)内面化のプロセスを経ることで経験が知として創造され組織に溶け込んでいきます。そしてさらに次の試行錯誤へと繋がっていきます。

6.さいごに

今回はVUCA時代の戦略とリーダーシップ、更には組織学習にまで踏み込んで解説してみました。オートメーション化に適応すること、そして一時的な競争優位性を連続して構築していくことの重要性が分かっていただけたかと思います。

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