二転三転したアメリカ大統領線選挙情勢。
ここまで拮抗するとは思っていませんでしたが、最終的にはバイデン氏に決まりそうです。
バイデン大統領が誕生したらどうなる?日本への影響は?
https://cubeglb.com/media/2020/11/02/president_biden/
ブックメーカーのオッズも、開票始まって以来、トランプ氏に7倍ものオッズが付きました。よほどの事態がない限りでは、趨勢が決したと言えるでしょう。
しかしその「よほどのこと」が起きている、と主張する人たちもいます。
選挙戦の趨勢を決めた、と言っても過言ではないウィスコンシン州の開票結果についてです。
ウィスコンシン州は非常に票が割れており、99%開票時点で2万票しか差が開いていません。そのことも相まってか、いくつかの点が不審だ、とSNS上で議論が起きています。
しかしそのどれもがファクトチェックで否定されています。一つずつ見てみましょう。
【フェイク】バイデンの票が3時半~4時半に突如不正に加算された
発端となったのは「FiveThirtyEight」のツイートで掲載されたグラフです。
確かに3時半~4時半のあたりで、バイデン氏の票が著しく伸びており、不審だとの見方も自然かもしれません。
SNSで多くの人が「開票者は不正にバイデン氏の票を見つけた」と書いています。
トランプ氏もこの主張に迎合し、ツイートしましたが、twitterにより隠されています。
・グラフを書いたtwitterアカウントはデマの発信サイトですか?
いいえ、「FiveThirtyEight」は世論調査や統計等を中心としたウェブサイトで2008年に設立されました。
2013年にESPN(大手メディア・ケーブルテレビ会社)に買収され、2010-2013年にはニューヨーク・タイムズとも連携、
特に選挙選では、セイバーメトリクスを利用した予想で評価を得ている会社です。
ウィキペディアにもページがあります。
・このグラフ自体がおかしいのでしょうか?
いいえ、このグラフの数値も正確です。現在まで特に訂正されていません。
この動き自体は予想され、説明ができる動き
ミルウォーキー郡の選挙管理官であるジュリエッタ・ヘンリー氏は「私たちは投票用紙を見つけていません。投票は正確に数えられています」と述べています。
では何故このように唐突な「垂直」が発生したのでしょうか?
このグラフの増加は、まさに今回の選挙戦を分けた「不在者投票」が関わっています。
この垂直は「ミルウォーキー市」が「不在者投票の票」を加算した時刻です。
まず「ミルウォーキー市」ですが、ここは民主党が非常に強い場所です。
7割もの人がバイデン市に投票しています。ミルウォーキー市の票が民主党に偏るだろうことは選挙前から予想されていました。
そして更に「不在者投票」という制度が不審を抱かせる要因となりました。
本来日本でもそうですが、「不在者投票の票」は「普通投票」の割合とほぼ同じになるはずです。しかし、どちらかの立候補者自身が「不在者投票を行わないように」と呼びかけた場合は違います。
トランプ氏は不在者投票には不審な点があるとし、直接投票を呼びかけていました。
なので、不在者投票のほとんどはバイデン氏への票となりました。
そして開票が行われた場所も関係しています。
ウィスコンシン州の他の州は、投票所で不在者投票の票を数えましたが、ミルウォーキー市と他の38の地域は、中央投票所で不在者投票を数えたので、不在者投票の票だけが3時半~4時半の間で一気に報告されました。
そのような要因があったので、あのような垂直のグラフが形成されました。
正確には午前3時26分から午前3時44分まで、ジョー・バイデン前副大統領の投票は149,520票(バイデンの総投票数の9.2%)増加し、トランプの投票は31,803票(総投票数の2%)増加しました。ミルウォーキー市は、この垂直部分すべてではありませんが、ほとんどを占めました。
ウィスコンシン州の選挙管理委員も、この点に「何もおかしくない」こと表明しています。
ウィスコンシン州の選挙当局は、選挙日の投票用紙と不在者投票がどのようにカウントされ、報告されるかについて、有権者との間で完全に透明性を持っています。
これには、中央の場所でカウントされた不在者投票が水曜日の早朝に入ってくることも含まれています。
選挙結果がどのように報道されるのか、有権者が知っておくべきことをご案内します。
https://elections.wi.gov/node/7223
選挙管理委員のページでは、開票の方法、特に不在者投票をいつ開票し、どのように処理するかも明確に記載があります。
Central count facilities are open during Election Day and after 8 p.m. for public and media observation until counting is complete. At these facilities, election inspectors will be reviewing return envelopes for required information before recording these ballots in the poll book. Once a voter number is assigned to the voter, each envelope will be opened, the ballot will be removed and flattened, and the ballot will then be processed on the voting equipment.
https://elections.wi.gov/node/7223
中央集計施設は選挙日の間、午後8時以降、集計が完了するまで一般市民やメディアの観察のために開放されています。 これらの施設では、選挙検査官が投票用紙を投票簿に記録する前に、必要な情報を得るために返信用封筒を確認しています。 有権者に有権者番号が割り当てられると、各封筒を開封し、投票用紙を取り出して平らにした後、投票装置で投票用紙の処理が行われます。
全ての開票はメディアや見学者のいる中で行われました。
その中で、正式な方法を取ることなく10万票を追加し、そして最後までばれないようにする…というのは、ちょっと考えにくいでしょう。
【フェイク】ウィスコンシン州の投票率が100%を超えた!
もう一つ出回っているフェイクニュースがあります。
これはウィスコンシン州以外の州でも言われていますが、州の投票率が有権者数を超えたというものです。
多くのツイートはもうシェア出来ないようになっているので貼りませんが、「ウィスコンシン州 投票率」で検索していただくと多くのツイートが出てくると思います。
しかしこれは簡単に否定できるフェイクニュースです。
そもそもウィスコンシン州の有権者数として参照されているデータは、古いものです。
ウィスコンシン州は「同日有権者投票」というものができます。
もし投票日に引っ越せば、その日に投票ができる、というものです。
これはできる州とできない州がありますが、ウィスコンシン州は「できる州」で、更にほんの少しの票が命運を分ける激戦区であることは予想されていました。
なので、こういう事ができます。
あなたは「A党」の積極的な支持者だとします。
あなたの住んでいる州では、あなたの支持する党が圧倒的に勝利する予想です。
しかしすぐ隣りにあるウィスコンシン州、こちらはまだどちらが勝つかわかりません。ほんの少しの票で勝敗が分かれてしまうようです。ひょっとしたら僅差で「B党」が勝つかもしれません。
なので、あなたは選挙直前にウィスコンシン州に引っ越し、
投票所で「居住地の証明+身分証明書」を持って「A党」に投票しました。
……まあ気持ちはわかります。それは不正ではないのか!と思うかもしれませんが、この「同日有権者投票」は20の州で認められている正当な方法です。
(ちなみに「選挙前の引っ越し」はどの国でも同じようなことは行われています…)
なので数ヶ月前・数年前の人口調査と、投票時の有権者数が異なる、というのはまったくおかしいことではありません。
勝敗がわからない激戦区程その傾向があります。
実際の投票率は約88%前後
ウィスコンシン州の登録された有権者数は3,684,726人です。(1日時点)
現在99%時点で開票された票は、バイデン市が1,630,389人、トランプ氏が1,609,879人です。
足した数は「3,240,268人」、これは約87.9%です。
(更に最初に出した有権者数は1日時点なので、実際には「同日有権者投票」をおこなったもっと多くの人に、投票の資格があります)
参照元:https://edition.cnn.com/election/2020/results/president?iid=politics_election_national_map
落ち着いて情報を判断しましょう
もちろんこの後、「実は不正の証拠が見つかりました!」とか「裁判所で不正と判断された!」という流れも、物理的にはあり得ます。トランプ氏が法的な異議申し立てを検討していることは、主要報道機関でも報じられています。
しかしながら、この記事で上げたような誤情報は、すでに明確に否定されているものです。
「公正な選挙」それ自体はもちろん大切なものですが、明確な証拠がないにも関わらず「不正だ!」と誤った情報を拡散することは、何も良い結果を産みません。
どうかその情報を拡散する前に、本当にその情報が正しいのか確認してください。もし公式情報等で確認が難しい場合は、然るべき機関や人がその情報を検証するまで、拡散を待ちましょう。
(この記事の情報源は下記に記しています。こちらも確認してください)
誤情報の拡散は、SNSアカウントの削除や信用の失墜等、多くの悪いことを招きます。
情報の入手・拡散が容易な時代だからこそ気をつけていきたいですね。
参照:
https://www.politifact.com/article/2020/nov/04/fact-checking-avalanche-wisconsin-election-misinfo/
https://elections.wi.gov/node/7220
https://www.usatoday.com/story/news/factcheck/2020/11/04/fact-check-wisconsin-has-more-registered-voters-than-ballots-cast/6161713002/