『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』をきっかけに、各方面で鬼滅コラボを打ち出す企業が急増しています。
今や、鬼滅は「日本経済の柱」とまで言われるようになり、炭次郎の姿を見ない日はありません。
しかし、なぜここまで『鬼滅の刃』コラボが乱立し、そして成功しているのでしょうか?
その答えを時系列を追って考えたところ「認知度」と「成長の速さ」にカギがあるのではないかと考えました。
『鬼滅の刃』コラボはなぜ成功したのか。そして同様の現象は再現できるのか。
この記事では、その2点を考察していきたいと思います。
Dydoの「鬼滅缶」を筆頭に、ジャンルを問わず鬼滅コラボが乱立しています。
ついにはリカちゃんやチェキとのコラボも飛び出し、日本全国で鬼滅コラボを見かけるようになりました。
その経済効果は驚くべきもので、Dydoは2021年1月期の連結純利益予想を「5億円」から「25億円」へと上方修正!異常事態とも呼べる事態を起こしています。
ほかにも、くら寿司やジーンズメイトなど、鬼滅コラボを立てた企業は軒並み株価を上げています。
こちらの記事で詳しく解説しています。
さて、一番気になるのが、鬼滅コラボが「なぜ成功したか」ということです。
鬼滅の刃は2019年4月から放送されたアニメ。あまりにも短期間でのヒットに疑問を持つのも当然だと思います。
そのカギとなるのが「認知度」と「成長の速さ」。まずはコラボ成功の理由をこの2点から解説します。
「ドラえもん」しかり「キティちゃん」しかり、コラボが成り立つにはコンテンツが認知されることが大前提。ライトファン層をターゲットにする場合は特に重要です。
作品の認知度が「アニメ視聴者」でとどまっている場合、販売する商品もアニメ好きな人が買いそうな物を提供します。
しかし、ドラえもんやキティちゃんのように「国民的作品」になると、アニメ好き以外の層でも手に取ってくれるため、幅広い商品を展開することができるようになります。
例を挙げると「リラックマ」がいい例です。リラックマは、文房具やコスメ、アパレルまで、日常使いできるアイテムを幅広く展開しています。
『鬼滅の刃』はすさまじい「成長速度」でコラボ成功に欠かせない「認知度」を獲得しました。ドラえもんやキティちゃんなどが長年かけて築いてきた認知度を、ものの1年ちょっとで獲得してしまったのです。
つまり、超短期間でコラボに必要な土台を築いたため、それに追い付くように、今コラボが乱立している状態なのです。
アニメの放送開始が2019年4月、2020年の頭にはすでに社会現象化していました。
きっかけはアニメの放送に間違いありませんが、なぜ短期間ですさまじい成長速度で認知度を獲得できたのでしょう。Google Trendsのグラフから時系列で見ていきましょう。
上のグラフを見ると、アニメ放送開始後からアニメ最終回に向けて、検索ボリュームが少しずつ上がっているのが分かります。
アニメの注目度は、第1話で山が来て、その後落ち着いてしまうケースが多いのですが、『鬼滅の刃』は1話から最終話に向けて右肩上がりになっていることがわかります。
そして、アニメ最終回で一番大きな山を作っており、認知度の上がり方としては理想的な流れができています。
この流れを支えたのがアニメの「クオリティ」です。『鬼滅の刃』は放送中から映像美がたびたび話題になりました。また、難しい設定も少なく多くの年代に支持されたのも一つの要因だと考えられます。
アニメ終了後も検索ボリュームが上がっており、ところどころに小さな山ができているのが分かります。
この山には必ず「バズ」がセットになっていました。主にツイッターで情報が拡散され、その騒動をニュースが取り上げる流れです。
2019年9月28日のアニメ終了から2020年5月18日の連載終了まで、バズを繰り返すことで、さらに認知度を上げたのです。
12月4日、最終巻の発売でもバズが起こっています。
2019年9月28日
アニメが最終回を迎えると、多くの人たちが原作コミックを買いに走り、全国の書店から漫画が消えました。これによってアニメ未視聴層にも情報が届きます。
2019年12月31日
「紅白歌合戦」にLiSAが出場。主題歌「紅蓮華」をきっかけに、また知名度を上げます。
ちなみに、同時期に開催された「ジャンプフェスタ」では、『鬼滅の刃』ステージの席数を急きょ増やす事態に。
2020年1月7日
ローソンとのコラボ。当日は店頭からグッズが消える事態になりました。
本格的なコラボ企画はこれが初めて。
2020年2月14日
『モンスト』とのコラボ。コラボは大成功に終わる。ソーシャルゲームとのコラボはこれが初。
2020年5月18日
本誌連載終了。すでに映画の上映が決まっていたため、ファンの注目は映画へと移っていく。
グラフを見ると『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』のすさまじさが分かります。
上映当日の長蛇の列や、3日で興行収入46億を突破したことなど、大きな話題を呼んだためと考えられます。
そして、この歴史的ヒットには「絶妙」な上映タイミングが関わっています。
2020年4月以降、コロナ禍により映画業界は軒並み不調に。上映延期も相次ぎ、リバイバル上映も多く行われました。また、当時は席数制限が設けられ、全席販売できない状態でした。
そんな中で登場したのが『鬼滅の刃』です。9月19日に席数制限が解除されたこともあり。映画館はこぞって『鬼滅の刃』をプッシュ。
全国の映画館が『鬼滅』一色に染まった話題性も有り、歴史的ヒットを後押ししたのです。
短期間でコンテンツの認知度が爆上がりした裏には、SNSとサブスクリプションサービスの存在がありました。
最近は、何かが起こるとSNS上で共有、バズる流れができ上がっています。
アニメの最終回や漫画の売り切れなど、多くの出来事がSNSで共有されたのです。
また、サブスクリプションサービスで、いつでもアニメが見られるようになったのも大きいポイントです。放送終了後も見られるので、長期間にわたってアニメに触れることが可能です。
短期間で多くのコラボ企画が展開した『鬼滅の刃』。このムーブメントを、同規模で再現することは正直難しいと考えられます。
ただ、同じような「流れ」を再現することは可能ではないかと思います。
ここでは、ムーブメントの再現に必要な3つのポイントを考察していきます。
コンテンツが注目を浴び、コラボ企画を打つに耐えうる土台を作るには、すさまじい成長速度で認知度を上げる「急成長」が必要です。
「最近すごい勢いだよね」「最近きてるよね」
と、多くの人が注目することで認知度が一気に上がり、「投資してみよう」という意思が働くようになります。
急成長したコンテンツで記憶に新しいのがツイッター上で話題になった「100日後に死ぬワニ」です。投稿期間はたった100日でしたが、最終日のリツイート数は「73万」にも上り、SNSの拡散力を知らしめる結果となりました。
SNS上でのバズは、コンテンツの認知度を一気に加速させます。
最近では、SNS上のバズを起点に話題になる物事も多く、SNSがブームの出発点として働くようになってきました。
一度バズが起こると多くの人に認知され、次のバズが起こる土台ができ上がります。
『鬼滅の刃』では
アニメ終了 → 漫画売切れ → ローソンコラボ売切れ
と、人気を知らしめる出来事が立て続けにバズり、認知度を上げたと考えられます。
バズを意図的に起こすのは難しいですが、一度バズが起こったら次のバズが起こすチャンスも広がります。
認知度の急上昇も、SNS上でのバズも、大前提として人を惹きつける「クオリティ」が必要です。
『鬼滅の刃』は元々アニメのクオリティが話題になり広まっていった作品です。映像・音楽・シナリオとどれも素晴らしく、難しい設定も少なかったことから、ここまで多くの人に親しまれる結果になったと考えられます。
作品だけでも、認知度だけでも、今回のムーブメントは起こらなかったでしょう。『鬼滅の刃』のムーブメントは、良い作品が絶妙なタイミングで広まっていった結果ではないでしょうか。
SNSが浸透した今、大なり小なり『鬼滅の刃』と同じようなムーブメントは起こると想定されます。
2020年の「紅白歌合戦」出場が決まった「瑛人」さんも、SNSで話題になったのがきっかけ。今後も認知度を爆上げして社会現象を起こすコンテンツが現れると考えられます。
そして、そこにコラボを仕掛けるには「トレンド感」と「スピード感」が重要。人気が爆発する予兆を見抜き、いち早く仕掛けることが、今後のコラボビジネスに大切なのではないでしょうか。