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センチュリーの価格が2000万円の理由!ヒントは制作現場にあった

財政難に直面しているにも関わらず、公用車としてトヨタの最高級車・センチュリーを購入した知事が批判されています。

主な用途は皇室や海外要人の送迎ですが、貴賓を送迎する回数は極めて少ないからです。

専用車両を有する5県のひとつである山口県は、2017年度以降に皇族を乗せたのは2日でした。

参照:https://mainichi.jp/articles/20201005/k00/00m/040/224000c

税金で高級車を購入しているうえに環境への配慮も足りないことから、批判は当然といえるでしょう。

まずは、センチュリーという車について簡単に説明します。

1967年に誕生したショーファードリブンカー

初代センチュリーは、トヨタグループの創設者・豊田佐吉の生誕100周年を記念して誕生しました。

車名であるセンチュリーには、「世紀(100年)」という意味があります。

自らハンドルを握るのではなく、専属の運転手が運転することを前提に誕生した「ショーファードリブンカー」を代表する車のひとつです。

引用:トヨタ公式サイト

センチュリーのモデル変遷を、以下にまとめました。

  • 初代モデル:1967年
  • 2代目モデル:1997年
  • 3代目モデル:2018年

現在販売されているセンチュリー(現行型と呼ぶ)は、2018年以降に製造されている3代目モデルです。

無駄を排除するトヨタの生産方式とは真逆のコンセプトをもつ車種であり、熟練工が手間や時間をかけて製造していることが大きな特徴です。

次に、センチュリーの車体価格をみていきましょう。

年々増加するセンチュリーの車体価格

実は、センチュリーは先代モデル登場時の車体価格から2倍以上も値上げされています。

先代モデルが登場した1997年当時、センチュリーの車体価格は925万円でした。

しかし、先代モデルで最も新しい2014年では1,253万円、現行型では1,996万円です。

※表・グラフは、販売当時のカタログを基に筆者が作成

先代型は専用のプラットフォームだったのに対して、現行型はプラットフォームを含むベース部分は「レクサス・LS600h(4代目モデル)」と共通です。

ベース部分を新規開発せずに、ひと世代前のLSとあえて共通にしたのは「センチュリーは何が何でも壊してはならない」との理由からです。

センチュリー値上げの要因

主な要因は、以下のとおりです。

  • 増税
  • 安全装備の追加
  • 材料費・人件費の高騰
  • ハイブリッドシステムの搭載
  • 販売台数が少ない(需要の減少)

値上げに最も影響を与えているのは、「販売台数の少なさ」です。

主な顧客である法人は、財政悪化からレクサス・LSやミニバンを代替として選ぶ傾向にあります。

引用:トヨタ公式サイト

しかも、日本国内専売であるために海外では販売されません。

先代が発売された1997年当時の月間販売目標台数は200台でしたが、2019年では50台まで減少しているのです。

「かかった開発・設備費用の回収に加えて、生産数の少なさからコストダウンも図れない」

大幅な値上げの裏には、こういった事情があるようです。

次で、海外の知事が使う公用車の値段と比較してみました。

海外の知事が使う公用車の値段は?

北米トヨタの製造工場があるインディアナ州の知事は、「セコイア」というトヨタのSUVを公用車にしています。

セコイアはアメリカとカナダで販売されているフルサイズのSUVで、ボディサイズはランドクルーザーを上回っています。

しかし、ランドクルーザーほど走破性を重視した設計ではないので、重量は同車より軽量です。

引用:トヨタ自動車株式会社 公式Twitter

セコイアの車体価格は48,400~64,110ドルであり、日本円に換算すると500~670万円ほどです。

兵庫県の井戸知事は「県域が広大で山が多い」ことをセンチュリー購入の理由にしていますが、インディアナ州と兵庫県のデータを以下で比較してみました。

インディアナ州南部は森林と農場が混在しているのが特徴で、兵庫県の総面積の約11倍、森林面積は約3.4倍も広大です。

しかし、州知事の公用車・セコイアの車体価格はセンチュリーの約25~34%です。

安全装備についても、セコイアは最新のものを全グレードに標準装備。ひと世代前のものが搭載されたセンチュリーよりも、性能は大幅に高いといえます。

悪い意味で注目を浴びてしまっているセンチュリーですが、次はどんな場所で製造されているのかみていきましょう。

センチュリーは「東富士工場」で製造

センチュリーを製造する東富士工場は、静岡県裾野市にあります。

裾野市は霊峰・富士山のおひざ元であり、東富士工場は土地面積268,000平方メートル、建物面積132,000平方メートルという広大な敷地をもっています。

1967年からセンチュリーを製造する由緒ある工場であり、マークII、カローラ・レビン、クラウンコンフォート、チェイサー、クレスタ、レクサスSC、JPN TAXIなども手がけています。

しかし、残念ながら東富士工場は2020年12月に閉鎖を予定しているようです。

東富士工場での生産は東北に集約されるため、約1,100人の従業員は東北に異動する見通しです。(センチュリーの次期生産工場は未発表)

なお、東富士工場の跡地はトヨタが次世代技術を実証する「コネクティッド・シティ構想」に選ばれています。

引用:トヨタ公式サイト

次からはセンチュリーが他車と比べて高額な理由を、東富士工場の制作現場よりいくつかの工程をかいつまんでご紹介します。

驚きの工程①:ボディラインの形成

車体側面に凹凸をつけて基本の形状を構成する「キャラクターライン」は、日本の伝統的な技法を用いて「手作業」で形成されています。

平安時代に、間仕切りや目隠しで使われた屏障具(へいしょうぐ)のひとつが「几帳」。

削られた几帳の柱の面は、あまりにも丁寧に仕上げられていたため「几帳面」と呼ばれ、今日の日常会話でも使われています。

また、ボディプレスの修正にいたっても手作業で行われるほか、人による目視検査でも手間や時間を惜しみません。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=u6tBzf2fgW0&t=29s

なお、使われる工具は職人が使いやすいように調整されたもので、各自のスキルや経験でボディの調整を行っています。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=u6tBzf2fgW0&t=29s

驚きの工程②:ドアの取り付け

ドアの取り付けでは、キャラクターラインの「几帳面」を崩さないようドアヒンジが角度をまっすぐになるよう調整します。

しかし、取り付け直後のキャラクターラインはまっすぐではありません。

フロントドアとリアドアの境目は、わざと「ズレ」を作っておきます。

この工程のあとに内装材を取り付けますが、センチュリーのような高級車の内装材は重量があるためドアが下がってしまいます。

つまり、内装材取付後の仕上がりまで計算されているのです。

しかも、ドアとドアの隙間は「トヨタ最小値」である3.5mmに統一されていて、やはり検査は目視で行われます。

驚きの工程③:深い漆黒を実現する塗装

現行センチュリー目玉のひとつが、鏡面仕上げの塗装です。

4色のボディカラーのうち、「神威 エターナルブラック」はセンチュリーのイメージカラーであり、

漆黒感を出すために職人の技術が惜しみなく使われています。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=u6tBzf2fgW0&t=29s

まずは、塗装です。

一般的な自動車の塗装は「電着」「中塗り」「ベースカラー」「クリア」の4層ですが、センチュリーはさらに以下3層の塗装が加えられます。

  • ベースカラー
  • カラークリア
  • トップクリア

「カラークリア」には光が反射しにくい黒染料が配合されていて、センチュリー独自の漆黒感を表すのに欠かせません。

次に、「水研(すいけん)」の工程です。

水を流しながら、塗装面の細かい凹凸を修正していきます。

水研工程は、2人の職人によって90分×3回も行われます。

引用:https://www.youtube.com/watch?v=u6tBzf2fgW0&t=29s

最後は、バフ研磨による鏡面仕上げです。

樹脂が配合された塗装は研磨時に圧をかけすぎると焦げてしまうことから、職人の経験やスキルが求められます。

塗装工程だけで、何と1週間もかかってしまうようです。

なお、ご紹介した驚きの工程は以下の動画で視聴することができます。

その他:手彫りの金型での「鳳凰エンブレム」

センチュリーの象徴・鳳凰エンブレムも、特筆点のひとつです。

初代モデル誕生当時に当時の工匠が創り上げた手彫りの金型を、江戸彫金の流れを汲んだ現代の第一級工匠が継承・昇華させています。

引用:トヨタ モビリティ東京

繊細な羽毛の表情や翼のうねりなど、最新の設備でも再現できない躍動的で繊細な鳳凰の姿を職人の手で生み出しています。

なお、鳳凰エンブレムの制作には1ヶ月半もの期間を費やすようです。

日本が世界に誇る高級車

上記の工程は、全行程のほんの一部です。

どの工程をとっても「日本のモノづくり」の精神が活かされていて、購入者は高い満足感を得ることができるはずです。

壊れないように製造されているため、長く乗り続けることもできるでしょう。

しかし、「税金」で購入することに国民は怒っています。

数少ない貴賓対応ならレンタカーの方が安上がりですし、近隣の自治体とシェアすることも可能だからです。

知事自身の財産で購入するなら問題ありませんが、人口減少による財政難で高額な車両を購入することが問題視されています。

センチュリーのイメージダウンを避けるためにも、見直しを願うばかりです。

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