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NASAの火星探査車パーサヴィアランスがもうすぐ火星に到着!古代の火星に生命は存在したか?

いよいよNASAの火星探査車パーサヴィアランスが、2021年2月18日、火星に到着します!

パーサヴィアランスは古代の火星に生命が存在したかどうか、その痕跡を探ります。また、NASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)が2020年代後半から実施する「マーズ・サンプル・リターン」計画で重要な役割をはたします。

今回は、このようなパーサヴィアランスのミッション、マーズ・サンプル・リターン計画ではたす役割などについて、いつものようにまるっと解りやすく徹底解説します!

パーサヴィアランスが着陸するジェゼロ・クレーターってどんな場所?

パーサヴィアランスが着陸する予定のジェゼロ・クレーターの画像。パーサヴィアランスは左側の上方にある楕円の部分に着陸する予定。画像提供:NASA

NASAの火星探査車パーサヴィアランスは2021年2月18日に火星のジェゼロ・クレーターに着陸します。

では、このジェゼロ・クレーターとはいったいどのような場所なのでしょうか?

古代の火星は温暖でその表面には豊富な液体の水が存在したと考えられています。なぜなら、水の作用によってつくられた鉱物や流れる水の作用によってつくられたとみられる地形(河川、湖、三角州など)がたくさんみつかっているためです。

ジェゼロ・クレーターは、このような古代の火星(35億年以上前)において、広大な湖があった跡だと考えられています。その幅はなんと45kmほどもあります。ちなみに日本最大の湖である琵琶湖はだいたい長さ60km、幅20kmほどです。

ところで、このようなジェゼロ・クレーターでは興味深いものがみつかっています。炭酸塩鉱物です。

炭酸塩鉱物は、地球上では、サンゴの骨格、貝がら、ストロマトライトなどが堆積してつくられることが多いわけですが、地球上の、サンゴの骨格、貝がら、ストロマトライトなどは、主成分が炭酸塩であるために、とても丈夫で、化石として残りやすいのです。もしかしたら火星の炭酸塩鉱物にもこのような生命の痕跡が化石として残されているかもしれません。

また、炭酸塩鉱物は、水と二酸化炭素の相互作用によって形成されるために、その相互作用の微妙な変化が痕跡として記録されています。そのため、炭酸塩鉱物を調べることで、火星が、いつ、なぜ、水を失い、乾燥していったのか、手がかりを与えてくれる可能性があります。

ジェゼロ・クレーターには、岸沿いにこのような炭酸塩鉱物の堆積層が広く存在していることがわかっています。

最後に、NASAのジェット推進研究所のケン・ウィリフォード氏は次のように語っています。

湖の岸沿いに残されている炭酸塩鉱物の化学的な性質は太古の火星の生命と気候に関する大変に素晴らしいレシピです!

NASA’s Mars 2020 Will Hunt for Microscopic Fossils – NASA’s Mars Exploration Program

パーサヴィアランスは火星でどのような探査をおこなうの?

火星のジェゼロ・クレーターで探査にあたるパーサヴィアランスの想像図。ドリルを使って岩石のサンプルを採集している。画像提供:NASA

では、パーサヴィアランスは火星で具体的にどのような探査をおこなうのでしょうか?

パーサヴィアランスに搭載されている科学観測装置のうちのいくつかを簡単に紹介しましょう!

まずはシャーロックと呼ばれる装置です。「Scanning Habitable Environments with Raman & Luminescence for Organics & Chemicals」の略ですね。ロボットアームの先端に取り付けられています。

紫外線レーザーを当てると、岩石の表面で散乱しますが、この散乱した光を分析すると、その岩石にどのような有機物や鉱物が含まれているのか解ります。

このラマン分光法と呼ばれる方法を使って、シャーロックは岩石に含まれる有機物や鉱物を探ります。

で、このシャーロックはワトソンと呼ばれるクローズアップカメラと組み合わせて運用されます。火星でシャーロックとワトソンがタッグを組んで古代の生命の探査に挑みます!

また、パーサヴィアランスにはPIXLと呼ばれる装置も搭載されています。これもロボットアームの先端に取り付けられています。

X線を当てると、物質は特殊な光を出します。この特殊な光を蛍光X線といいますが、この蛍光X線を分析すると、その物質の化学的な組成が解ります。

この蛍光X線分光法と呼ばれる方法を使って、PIXLは岩石の化学的な組成を探ります!

さらに、これらの装置は有機物、鉱物、化学物質などが岩石の表面にどのように分布しているかマッピングすることができます。これは火星の古代における生命の痕跡を探すために大きな手掛かりを与えてくれます。例えば、岩石の一部分に生命の材料となりうる有機物が集っていれば、それは何かしらの生命の痕跡(例えば、微生物の化石)である可能性があります。

パーサヴィアランスはこのような装置を駆使して、太古の火星における生命の痕跡を探ると共に、古代の火星における気候や地質も探る予定になっています。

パーサヴィアランスは火星サンプルリターン計画でどのような役割を果たすの?

岩石の欠片、土壌などのサンプルが入ったカプセルを打ち上げる火星着陸サンプル回収機の想像図。画像提供:NASA

NASAとESAは共同で火星サンプルリターン計画を推し進めています。

計画では、2020年代後半に、火星周回地球帰還機と火星着陸サンプル回収機の2機を火星に送り込み、2030年代後半の火星からのサンプルリターンを目指しています。

この計画において、パーサヴィアランスはとても重要な役割をはたすことになっています。

まず、パーサヴィアランスが、シャーロックやPIXLなどを使って、有望そうな岩石を探し、ドリルで砕いて、チョークほどの大きさの欠片にし、金属製のチューブに回収します。このチューブは火星の地表にそのまま置かれるか、パーサヴィアランスの内部に格納されます。その数は30本から40本にもなります。

火星サンプルリターン計画では、このチューブを回収して、地球に持ち帰るというわけです。

地球にサンプルを持ち帰ることで、地球の研究施設でより詳しい分析が可能になります。

最後に

いよいよ2021年2月18日にパーサヴィアランスが火星に到着します。パーサヴィアランスは古代の火星における生命の痕跡を探すと共に火星サンプルリターン計画で重要な役割を演じます。

もしかしたら、近い将来、火星で微生物の化石がみつかるかもしれません。とても楽しみです!

なお、パーサヴィアランスの着陸のようすはリアルタイムでNASAから配信されます。興味のある方は、是非、見てみてください!

Mars 2020 Perseverance Rover – NASA Mars

<参考URL>
https://www.nasa.gov/feature/jpl/7-things-to-know-about-the-nasa-rover-about-to-land-on-mars

https://mars.nasa.gov/news/8549/nasas-mars-2020-will-hunt-for-microscopic-fossils/

https://www.jpl.nasa.gov/news/the-detective-aboard-nasas-perseverance-rover/

https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-new-mars-rover-will-use-x-rays-to-hunt-fossils/

https://www.jpl.nasa.gov/news/nasa-moves-forward-with-campaign-to-return-mars-samples-to-earth/

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